新入生歓迎会でも風雲少年跡部くんがひたすら自己主張していた気がする。
周りは何も言わない、というか言えない。
ああいうのをカリスマ性があると言うのだろうか。
無事にかどうかは定かではないが、とりあえず終わった歓迎会。
が、放課後、私はとんでもない場面に遭遇してしまった。
なんと跡部くんが上級生に絡まれているではないか。
あれか、集団リンチか。
どうしよう、先生を呼ぶべきか。
しかしそれは杞憂に終わる。
いい気になるな、偉ぶって、と詰め寄る上級生を、跡部くんは冷めた目で見ていた。
そしてため息をついたかと思えば、こんな話をしだした。
「お前ら、新聞配達をしている氷帝生を知っているか」
…え?私?
「この間新聞を取ったんだがな…そいつを謳った詩があったんだ」
…いやまさか、でも、跡部くんと同じ新聞取ってるし、え、ちょっと待って。
本人に断りなく書いたのか?
いや、いくら何でもそれはない。
昨日の新聞見とけばよかった。
「“その少女、孤独”から始まるんだが…」
私だよオイ。
完璧私だよ。
「“気丈な小さき主婦也”と続いてだな」
やっぱり私だよ。
そんな企画出したの誰だ。
というか、跡部くんは何を伝えたいんだ。
ほら相手も何それって顔してるよ。
「何言ってんだお前…」
「あーん?まあ、要約するとだなあ」
そして次の跡部くんの発言は、多分手榴弾並みに威力があっただろう。
「文句があるなら立派な人生観を持って来い庶民」
じょ。
上級生に向かって何て傲慢な。
私はつい固まってしまう。
その固まっている間に、上級生たちは剣幕に圧されたのか逃げてしまった。
はっ、私も油売ってる場合じゃない。
新聞確認して、新聞社の方に問いたださねば。
上級生たちを鼻で笑う跡部くんを横目に、私は家へ走り出した。
もし私の解釈が“跡部景吾に褒めて貰った”というもので間違っていなければ、私は彼のことを人間的に好きになれそうだ。