入学式は授業もなく、クラスメートや担任の顔合わせだけで終わることとなった。
私のクラスには幼稚舎の頃の知り合いはおらず、いわゆる、ぼっちという奴だ。
まあ幼稚舎の頃も、宍戸くんや少数の女子しか話し相手がいなかったが。


その日、私はスーパーに寄って帰った。
明日は新入生歓迎会があるそうなのだけど、食事は購買かお弁当だからだ。
とりあえず唐揚げでも作ろうかと、材料をカゴにつめる。
なんとなくお菓子も欲しくなって、好物の甘露飴を取りにお菓子コーナーに行く。

するとそこに、氷帝幼稚舎の基準服を着た男子がいた。

歳は私が上の筈だが、男の子だから私より背が高い。羨ましい。
彼はせんべいの置いてあるところで何か悩んでいる様子。
和風お菓子はまとめて置かれてある為、甘露飴もそこだ。
彼がその場を離れないと買えない。

しかし彼は悩みに悩む。

動く気がしない。
何に悩むのかと近くに寄ってみると、高いが質のいいぬれせんべいと、量はあるが安物のぬれせんべいとで悩んでいるようだ。
ああ、確かにそれは迷うな。
ならば存分に悩むべきだ、と私はその少年を見守る。
幸い彼は私に気づかず、結局質のいい方を選んでレジに向かった。


かくいう私は、少年に触発されぬれせんべいを買ってしまった。



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