基山ヒロトと言う人物が俺は嫌いだ。円堂守はキャプテンとしてちゃんとチームメイトと向き合いキャプテンとして二本足できちんと地にたっている、それなりに尊敬はしている。豪炎寺や鬼道もそれなりに嫌いではない、別にチームメイトが嫌いな訳ではない、ただ戯れる事が嫌いなだけであって。いや今はそんな事ではなく基山ヒロトだ。誰にでも隔てなく優しくし、薄っぺらい愛想を振り撒く。偽善者にしか見えなかい。みていてイライラするのだ。
普段ならアイツの事は完全無視、だが今日はやたらとアイツは俺に絡んでくる。そのせいで練習にも身が入らずストレスは積もりに積もっていた。練習が終わり宿舎へ帰ろうとするとまた名前を呼ぶ声がする。
「不動くーん!」
無視して歩いていると小走りで追いついてきた。早足で距離をおく。
「ムカつくんだけどお前」
はっきりと、ぴしゃりとそう言うとアイツはあははと笑った。そう軽く流す所もイラつく。コイツの全てが俺のストレスと化していた。
「なぁなんで今日はやけに俺に構うんだよ気味悪い」
「不動くんと仲良くなりたいから」
「そう言うのがイラつくんだよ!」
声を張り上げるとタオルを抱えながら前を楽しそうに歩くマネージャーがこちらを向いて心配そうにみている。チッと舌打ちをひとつ。
「気味の悪い笑顔張り付けてヘラヘラと…八方美人気取って楽しいか?俺が一人でいるのが可哀想なのか?いらん同情押し付けんな偽善者」
我ながら酷いことを言ったと思う、でもこうでもしなきゃアイツは俺から離れないと思った、柄にもなく罪悪感に襲われアイツの顔をまともに見れない。
「ふーん」
今までに聞いたこともない程の冷たい声、驚いてアイツの顔を見るとあいかわらずニコニコと笑っていて、なのにその声帯から出される音は氷のように冷たい。背筋にゾクリと寒気が走る。
「それが君の俺へ対する印象ならそれでいいけど、ねぇ不動くんなんで俺が君と仲良くなりたいかわかる?」

「君が大嫌いだから」


後でね、と言ってザッザッと足音をたてて走っていくアイツの背中を見ることさえ出来なかった。


基山と不動


title へそ
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