日曜日の午後、外はポツポツと微妙な量の雨が窓をうっている、そんな時私は道也と共にいた。
世間一般ではこうやってやることもなく恋人と過ごす事を「おうちデート」というらしいが、そんな大層なものでは
ないと思う。ソファにただ座りお互い雑誌を読むだけなど友達同士でも普通にやることだ。
寂しい、ふとそんな事を思う。
大人だからといって寂しいと思わないわけでなければ、私は感情のない無機質な機械でもない。
だからといって素直に寂しいといえず、うじうじと一人で抱え込んでしまう。
人の感情とは大層めんどくさいものだ。ふうとため息をつき隣ででサッカー雑誌を読む道也に目を向けた。
男の人にしては綺麗な肌に、少し残った髭の剃り残し。そんなささいな所に母性本能をくすぐられた。
黒のVネックから見える綺麗な鎖骨にもドキリとしてしまう。色恋にあまり経験がない私は、自分の乙女な思考に寒気がした、でもあふれ出る想いをとめる事は不可能だった。
体から湧き出る熱を抑える為立ち上がり、キッチンへ向かった。道也の家にはもう数え切れない程来ているし、料理も何度か作ったことがあるためキッチンになにがある食器棚の上にある引き出しからティーパックを取り出す。これは私が買ったものだ、コーヒー派の道也が自分でティーパックを買うわけがない。カップを二つ出し、一つのカップにティーパックをいれ、もう一つのカップにあらかじめ出してあったインスタントコーヒーを二杯程入れた。道也は濃いめのコーヒーが好きだ。
ピー、とお湯が沸く音がして火を止めカップにお湯を注いだ。ほくほくと湧き出る湯気が顔にかかった。
両手にカップを持ちソファへ向かう、何もいわずに机にカップを二つコトリと置いた。
すると道也も何もいわずにカップを口につけ一口飲む。
横にこしかける事はせず、道也の後ろに立つと少し屈み道也の首の後ろにこつんと顔を寄せた。道也が雑に向けていた目をこちらに向けたがあまり気にせずすん、と鼻をならせば道也の、休日にしかつけないシトラス系の香水と少し残る汗の臭いが鼻腔を擽る。
私は恥ずかしい話だがこの臭いが好きで好きで溜まらなかった。
そのまま暫くその体制を保ったまま目を閉じているととても安心した。
道也の臭いは、兄に似ていた。
「瞳子」
急に聞こえた低めの道也の低めの声にびくりと肩がはね、顔をあげると目の前に道也の顔があってなおさら驚いた。
「なに、」
少し焦りがまじった声で言うと道也は立ち上がりそっと私を抱きしめた。
突然のことに、ひゃっと寒気がするような気持ちが悪い甲高い声を上げてしまう。
道也は私に対してはいつも唐突だ、ふわりと香る洗剤の香りに身をよせながらそんなことを思った。
「しばらくこうしておく」
顔は見えないがきっと道也の顔は少し赤くなっているのだろう、抱きしめている道也の体温から伝わる。
気がつけば寂しいという感情はいつのまにか消えていた。




久遠と吉良
title にやり
さらへ!キリ番報告があったので!
初書きでしたが楽しく書かせて頂きました。臭いフェチな瞳子監督を書いた…つもり…
書き直し修正いつでも受け付けます。
さらさんのみお持ち帰り可。

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