頭が痛い。
午後の授業も終わり机に伏せて長ったらしい担任の話を聞き流しながら頭痛に耐える。
元々頭痛持ちな訳でもなければサッカー部で鍛えられている為免疫力は高い筈、夏風邪ということはないだろう。まぁあくまで俺の勝手な思い込みだけど。
教室の気温は30℃を越えていて湿気と熱さが混じりあって肌にまとわりつく。位置的に扇風機の風も届いてくれない、最悪だ。

やっと担任の話も終わり、日直の円堂の「起立、」と言う声が聞こえ重い腰をあげ立ち上がる。
「礼っ!」
円堂の活気が溢れる声量に正直憧れる。
頭を軽くさげエナメルバックを肩からさげる。
すると円堂が勢い良くこちらへ近づいてくる。そして声を張り上げた。
「風丸!今日俺日直だから先部活いっといてくれ!」
「手伝おうか?」
「平気だって!じゃああとでな!」
そう言うと円堂は自分の席に戻っていった。
相変わらず頭痛はひどいし体はだるい。これは本気でやばいな。
豪炎寺を目で探すが教室に豪炎寺の姿はない。
今日は用事があるから部活にいけない見たいな事いってたな。
鬼道も半田も見当たらない、二人も先にいってしまったのか。
仕方がなく一人で教室を出る。
すると急に視界が歪みふらりと倒れてしまいそうになった。
辛うじて壁に手をつき体制を整える。
「風丸!?大丈夫か!」
突然遠くから声が聞こえ見覚えのある顔が走ってこちらへ近づいてくる。
「染岡…」
染岡は近くまでくると心配そうに俺の顔を見た。
「ああ、大丈夫だ」
「大丈夫じゃねぇだろ、ふらふらじゃねーか」
染岡にバシンと軽く頭を叩かれる。
「俺今日部活休むから円堂にいっておいてくれないか」
「わかった、帰って飯食って風呂入ってとっととねろ。じゃねーと風邪引くぞ、夏風邪は治りにくいからな。」
「サンキュ、染岡」
「後これやる」
染岡は鞄からペットボトルを取り出し手渡してきた。
買ったばかりなのか熱さでペットボトルは汗をかいている。
「買ったばっかでまだ飲んでねぇから、これ飲みながら帰れ。」
「はははっありがたくもらっておくよ、本当に染岡は親みたいだなっ」
「お前だって変わらねぇだろ、じゃあな。大事にな」
俺が笑って言うと染岡は視線を窓の方に移しくるりと後ろを向いてあるき出した。
染岡軽く手を振る。相変わらず染岡は友達想いで優しいやつだ、強面な顔さえどうにかなれば絶対モテるのに。

そんな事を考えながらいつもより長く感じる帰り道を歩く。
登り坂に差し掛かると一層足が重く、頭を鈍器で殴られるような激痛に教われた。
貰ったスポーツドリンクを一口飲むと少し楽になった。
もう夕方だと言うのにジリジリと嫌がらせの様に照りつける太陽をギロリと睨んでみるが特に何も変わらない。
「っ…」
ほうにつ、と汗が流れる。背中は汗をかきすぎてジメジメする、ああ気持ちわるい気持ちわるい!
苛立ちを抑えつつもうすぐ終わる登り坂を歩こうと足を踏み出すとまた視界が歪み、足から力の力が抜ける。あ、倒れる。
だがいつまでたっても頭に堅いコンクリートが当たることはなかった。
誰かに支えられている。目をあけるとそこには
「大丈夫かよ!?体調悪いならいってくれればいいのに…」
「…え、円堂?」
汗だくの円堂が半分怒った顔をしていた。
そんな円堂の顔がなんだか可笑しくて笑いをこらえられなくなりあははと笑う。
「何が可笑しいんだよ!もう!」
円堂は怒って言うと体制を整わせてくれた。
そして俺の前に来て後ろ向きで屈んだ。
「ん」
「は?」
「家までおぶってってやるよ」
「やだな、恥ずかしいからやめてくれよ」
「いいから」
円堂が真面目な声で言う。断っても無駄とさとり円堂の背中に乗った。
円堂は安心したように息を吐くと立ち上がった。視線が高くなる。
円堂の背中は思ったより大きくてなんだかとても恥ずかしくなり円堂の背中に顔を埋めた。
洗剤と砂ぼこりと汗が混じった円堂の匂いがする。
「円堂」
「ん?」
「…いや、何でもない」
ああやっぱり俺はこの男が好きなのかもしれない。





円堂と風丸




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