FFIの日本代表を決める先行試合が終わって何週間かたった日の事だ、河川敷で先行試合で代表に選ばれなかった仲間と練習をしていた時「ねぇ」と声が聞こえたものだから振り向いて見ると縦ロールの変わった髪型をした同じくらいの年頃の女の子が一人。
「僕に何か用?」
周りの人達は彼女の存在に気づいていないらしく、仕方がなく返事をすると彼女は手に持っていた大きい紙袋をどすんと地面に降ろして大きく背伸びをした。
「アンタそのユニフォーム雷門中でしょ、雷門中って何処」
感情の無いさっぱりとしていている声で彼女はいった。しかも目は此方に向いていないし無愛想だから印象は最悪、といった所だ。顔は可愛いのに勿体無いなぁ。
少し気に触ったがそこは得意のポーカフェイスで淡々と対応する。
「口で説明されてもわかんない、案内して」
断る理由も無かったので仲間に一声掛けようと駆け寄っていくと帝国の佐久間が青ざめた顔で近寄ってきた。
「た、小鳥遊…」
「あ、佐久間次郎じゃん」
彼女は小鳥遊さんと言うらしい。そう言えば名前を聞いていなかった。
佐久間の反応からして、小鳥遊さんと佐久間は知り合いなんだろう。
「佐久間、知り合い?」
「…まぁな…」
「じゃあね佐久間次郎、それより早く案内してよ、ニット帽の少年。」
小鳥遊さんは急に手を引っ張ってきて、ずんずんと歩いていく。
ふと小鳥遊さんを見ると横顔がとても綺麗で、ドキリと心臓が鼓動を早めた。
「ねぇ小鳥遊さん」
「何」
「何で雷門中にいきたいの?」
そう訪ねるとピタリと小鳥遊さんの足が止まる。何かまずい事でもいってしまったのだろうか。
すると小鳥遊さんが何かいったようだったが声が小さくて聞き取れない。
「え?」
「不動明王に用があんの!」
不動明王、確か代表入りした真帝国学園とか言うのの生徒だったかな。興味が無かったから忘れかけていた。
心なしか小鳥遊さんの顔が赤いような気がする、好きなのかな。
再び歩き始める。後ろにいる小鳥遊さんを妙に意識してしまう。気がつくと雷門中の前まで来ていて、足を止めた。
「ここだよ」
「そう、ありがと、そう言えばアンタ名前は?」
「松野空介、マックスって呼んでよ。小鳥遊さんの下の名前は?」
「ふーんありがと、マックス。あたしは忍、小鳥遊 忍」
女の子なのにかっこいい名前だな、そんな事を思っていると小鳥遊さんは何か手渡してきた。
手を見るとのど飴が一つ。
「お礼」
「ありがとう、また会えるかな、小鳥遊さん」
「忍でいいよ、アンタとあたしが望んだら会えると思う」
小さく笑いそう言うと小鳥遊さんはグラウンドに向かって歩いていった。
早くなった鼓動を無視して貰った飴玉の袋を開けてぽい、と口に入れると林檎の味がした。
へぇ、一目惚れってこんな感じなんだ。



マックスと小鳥遊





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テーマ「人外ファンタジー」
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