サンダルと言うものを生まれて初めてはいた、と言えば大袈裟になるけどこんな可愛らしくてヒールの高いサンダルを穿いたのは生まれて初めてだった。ビーチサンダルとかヒールの無い百円均一で売っているようなサンダルなら、夏は殆ど穿いていたけど。
カツリカツリと音を立ててコンクリートの上を歩く、それはもう歩きにくい事この上なかった。そもそも普通にスニーカーで行こうと思ったのに、まいが穿いていけってうるさかったから仕方がなく穿いてやったんだ。それに加えて真っ白い膝下まであるキャミソールタイプのワンピースの上に半袖のジーンズの上着?って言うのかなこれ、を羽織らされた。
ファッションについては前にリカに徹夜で叩き込まれた気がしたけど全部忘れた、だって興味ないもん。
メイクやアクセサリーは肌が痒くなるからと言って何とか逃れたけど、男と出かけるなんて言わなきゃよかった。
待ち合わせ場所の公園に着くと噴水の前に既にアフロディは先に来ていたらしい、走ろうと思ったけどサンダルが邪魔して上手く走れないから諦めた。
長い金髪をポニーテールにしていて、しかも女顔だから何だが同姓と出かける気分になる。
「ごめん、遅れた」
「僕も今来た所だよ」
そんな、ベタな恋愛漫画の男が言う取って付けたようなセリフをアフロディは涼しい顔で吐いた。暑い筈なのに背筋に寒気が走る。
「かっこつけんな」
「そんな事はないさ」
はい、と言ってアフロディはジュースを差し出してきた。オレンジジュース好きなのしってたのか。
なよなよしてるくせに妙に紳士的で私の神経を逆撫でる。
パカリと缶のプルタブを上へあげ、ごくりごくりと飲んでいく。甘酸っぱいと言うより甘いだけだった。
半分程一気に飲むと近くにあったベンチに腰かける。
「足ちゃんと閉じないとパンツ見えるよ」
「うっさいな」
真顔でパンツとか言われるとなんか恥ずかしい。しかも美の神と讃えられるアフロディの異名がある彼が、だ。下着とか、もっとオブラートに包んで言えないのか。
急いで足を揃えるとアフロディは自分の手を私の手の上に乗せてきた。汗ばんでいるのに少し冷たかった。
「真顔でパンツとか言うなよ恥ずかしいな、仮にも美の神なんじゃないのアフロディって」
「僕は美しいよ」
「ナルシストかよ」
「事実を述べただけさ」
何故私はこの男と付き合っているんだろう本気で思った。
アフロディはふっと小さく笑いベンチから立ち上がり私に手を差しのべてきた。
その手を取ることもせず私も立ち上がる。
「何処に行こうか」
「アイス食べたい」
「いいよ」
「アフロディの奢りな」
「え、僕今月金欠なんだけど」
「神様だろ」
「理不尽だな…あ、言い忘れたけど」
「なに」
「似合ってるね、その恰好」
そう言って手を繋いでこようとするアフロディに凄く恥ずかしくなって思い切り背中を蹴り飛ばしてやった。



照美と塔子





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