ロマンチックランデブーの続き



ゴロゴロとサイズ違いの石が散らばる足場の悪い道に足を取られ、躓いて盛大に転んだ。ズザザ、と大きな砂をする音が土に吸い込まれる。その音に気づいたのか、緑川は振り向いた。
「大丈夫?」
近づいて来て手を差しのべてくる。緑川の少し小さい手を取って立ち上がった。
「ヒロトはドジだなぁ」
立ち上がると緑川は手を叩き笑う。夏の終わりの日差しが緑川を照らし、何だかとても泣きたくなった。
俺は遊園地に行った日から何処と無く緑川によそよそしくなっていた。緑川はそれに気づいないのか気づいていないふりをしてるのか、普段と態度は変わらなかった。
そんな日々が続いていた時だった、今度は緑川に連れられて行き先も分からず、この足場の悪い砂利道を歩いている。
何処に行くの?と訪ねても秘密!といって教えてくれない。正直帰りたかった。
何故俺の緑川への態度がよそよそしくなってしまったのか、と聞かれたらきっと口をつぐんでしまうだろう。
多分、知って欲しいんだと思う。父さんの事とか、今まで抱えてきた事、全部。
でもそんな事を緑川に話した所で緑川がそれを受け入れてくれるかわからないし、もしかしたら緑川の精神的重荷にになってしまうかもしれない。(多分これは俺の自惚れ)
今緑川と普通に接したら、きっと口が滑って全て言ってしまうから。と言うのが一番の理由かもしれない。

どれくらい歩いただろう。空は橙に染まっている。緑川はピタリと足を止めた。
そこは、大きな木が一本たっていて、夕日を一望出来る場所だった。
木にぶらさがる古そうなブランコに、何だか寂しくなる。
「綺麗だろ?」
「ここに連れてきたかったの?」
「うん、小さい時からのお気に入りなんだ。ヒロトにも見せたくて」
「そっか」
緑川はごろりと土の上に寝転がった。そして目を閉じた。
大きく沈む夕日を見つめる。吸い込まれそうな橙に、自分がちっぽけに見えた。
今思ってる事、全部この夕日に吐き出せたらどんなに楽だろう。そう思う。
耳を澄ますと、木のざわめく音や、風がせせらぐ音やひぐらしの鳴く声が聞こえ、夏の終わりを感じる。
「置いていこう、ヒロト」
「え?」
いきなり意味の分からない事を言い出す緑川に、頭に疑問符を浮かべる事しか出来なかった。
緑川は立ち上がり向かい合わせになるように立って、俺の手を取った。
「俺はヒロトじゃないから、ヒロトが悩んでる事なんかわかんないけけど、もし何かあるなら、ここに置いていこう。ここに置いていけば、悩みがヒロトを追っかけたりしないから。全部、吐き出しててよ。俺に聞かれたくないなら耳塞いでるからさ」

だから、もう寂しそうな顔しないで。
緑川はそう言うと耳を塞いで背を向けた。
緑川は、全部わかっていたんだ。
じわりじわりと目に貯まる水滴が抑える事もせず、ほうをつたっていく。
後ろから緑川が潰れる程、強く抱きしめる。小さく聞こえた悲鳴が可愛らしい。
緑川を離しすう、と息を吸い込んで、大声を張り上げる。
夕暮れに、全てを吐き出した。




基山と緑川
BGM girlfriend/初音ミク
title にやり


どうしてもこの曲で書きたかったし、前の話があまりにも消化不良だったので



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