音一つない無機質な病室に、笑い声が響く。
それがなんだか嬉しくて笑い声に混じってみるとかなりの安心感。
「一之瀬君の手術が成功して本当によかった」
目にうっすらと涙を浮かべ、それでもにっこりと笑う秋の姿に涙腺が緩んだ。
「カズヤ、はやく復帰してね!ミー寂しいから!」
「病室で大声を出すな、ディラン」
「まぁいいじゃないいの」
こうしてまた、仲間と笑いあえるとは思わなかった。自分の運強さに感謝する。
そんな事を思っているとバタンとドアをあける音がして、一際目立つ甲高い声が病室に反響した。
「ダーリン!」
焦りを隠す事なく顔に出したリカが、思い切り此方に走り寄ってくる。久しぶりの再開がこんな形になってしまい申し訳ない気持ちが押し寄せた。
抱きつかれると思ったら、リカは俺と向かい合うように立ってただただ俺を見つめるだけだった。
「リカさん、どうぞ」
俺の横のパイプ椅子に座っていた秋が立ち上がりリカに言った。
リカは無言で秋に頭を下げるとパイプ椅子に腰かけた。
土門がディランやマークに何やら耳打ちをしたようで「邪魔しちゃいけないね」と言って秋を連れて出ていった。
二人きりになった病室は、また音が無くなる。何かリカに話しかけようと口を開くとリカが下を向いてシーツを少し掴んで、泣いている事に気づく。
「久しぶりだね」
リカの頭に手を伸ばし、ゆっくりと頭を撫でる。
「ダーリンが…生きてる…」
「俺は死なないよ」
いつもは喧しい程大声で喋るリカが、やっと聞き取れる位の声で言った。その声でリカがどれだけ俺の事を心配して思ってくれていたのかがわかった。
しゃくりをあげながらダーリン、ダーリンと同じ単語を繰り返すリカがとてもいとおしくて引き寄せて抱き締めると息がしづらくなる程強く抱き締め返される。愛されてるなぁと思った。
正直、まだ秋の事が吹っ切れた訳ではない、でもこんなにも自分の事を愛してくれる人がいる。それならリカとこれからの人生を共にするのも悪くはない。まだ十四年しか生きていないけれど、今だけ永遠を信じたくなる。
リカはそう言う思いにしてくれる人だった。
「ねぇリカ」
「な…に…」
「退院したらさ」
「うん…」



「結婚しようか」

まだ先の話だけど。




一之瀬とリカ
title にやり



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