染岡は既に退院してる設定捏造注意


「えん、どう」
風丸の口から溢れ落ちる単語は最近これしかない。
真っ白な壁と消毒の独特な臭い。ジェネシスとの戦いで風丸が負った傷は相当なもので、俺が退院した後も風丸はこのまっさらな病室で、同じ単語を何度も、何度も繰り返すだけのつまらない時間を過ごしている。
かく言う俺もそんな風丸をただ隣で見つめるだけのつまらない時間を過ごしている。
風丸は強い男だと思う、だからこそ一度ガラガラと崩れると収集がつかない。一緒にいる時間が長い訳ではないから俺の勝手な解釈な訳だが。
助けて欲しいなら、そう言えばいいのに。円堂に会いたいなら、そう言えばいいのに。
ふと目線を花瓶にやると、花瓶に刺さった薄紫のアヤメがいつの間にか枯れている事に気づく。
「花、枯れちゃったな」
独り言のようにポツリと呟くと風丸は窓から視線を外して花瓶に向ける。そしてベッドから立ち上がって花瓶を思い切り床に叩きつけた。
バリーン。ガラスが割れる音が室内に響いてガラスの破片が飛び散る、透明な破片が西日に反射して綺麗だった。
何も言わずにパイプ椅子から立ち上がり、看護婦がくる前に破片を片っ端から片付けていく。手を切った、後で洗うことにする。
萎びたアヤメが此方を見てるようだった。
破片を集め終わり、水を雑巾で拭き取ってアヤメを拾い、作業終了。
風丸はそんな様子をブラウン管の向こうの出来事を見るような目で見つめていた。
「明日、退院だな」
おめでとう、と続けるとぽたりぽたりと風丸は目から滴を落としていった、今日もつまらない時間が過ぎていく。


次の日、風丸の荷物を運ぶ手伝いをする為に病室にいったら何事もなかったかの様に、風丸の笑顔を拝む事が出来た。
手をひらりひらりと降って、にっこり笑う風丸は、疲れてるだと思う。
「色々、迷惑掛けてごめんな」
久しぶりに風丸の口から溢れた沢山の単語。風丸は円堂以外にも単語を話せたのかと言う可笑しな錯覚に襲われた。
「調子は?」
「ああ、大分いいよ」会話が途切れる。暫くの沈黙の後、風丸はぽつりと呟いた。

「力が欲しい」





染岡と風丸→(円堂)


BGM/某○×△□より 初音ミク

こんな鬱な話にするつもりはなかったあああああ
疲れた染岡と風丸
感覚的露骨な表現ばっかですいません



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