Motif U

《この夢物語の未来が視えるかもしれない昔話・U》

……さて。ふたりのお姫様は、成長するにつれて、それぞれの美点が目立つようになりました。つまり、姉は美しさが。妹は頭の良さが目立ってきたのです。それと同時、欠点も目立ってしまいます。姉の方は成長するごとに頭が空っぽになっていき、何を聞かれても答えられませんし、妹の方は、ますます醜くなっていきました。けれど、パーティーの席では、いつも姉より妹の方が人気がありました。賢くて楽しい話ができるのは妹の方なのです。
ある日のこと。美しいけれど頭が空っぽなお姫様が、自分の馬鹿さ加減を嘆いてひとりで森の中で泣いておりますと、一人の男がやって来ました。この男は、とても醜いけれど、どっさり知恵を持っている隣国の王子・リケでした。リケは、この美しいお姫様の絵画を見て彼女に一目惚しており、お姫様にぜひ会ってみたいと思って、やって来たのです。リケはお姫様に話しかけます。
「お姫様。どうしてそんなに悲しそうにしているのですか。ぼくは、あなたほど美しい方に会ったことがありません。美しいというのは、とても大事です。それさえあれば、あとは何もいりませんのに」
「そんなことはございません。私のように、美しくても馬鹿であるよりは、あなたのように、醜くても賢くある方がどれだけ良いか!」
「それだけ悲しんでいるのでしたら、ぼくがその悲しみを取り除いて差し上げますよ。ぼくは、自分の一番好きな人に、たくさんの知恵を授けてやることができるのです。あなたが、ぼくと結婚さえして下さればいいのです。ぼくは、一年は返事を待ちますから」
リケの求婚に、お姫様の方はどぎまぎしてしまって、知恵も足りないせいで、自分の言葉でうまく答えられません。それに、一年後が来るなんて想像もできませんでしたから、リケと結婚することをあっさり約束してしまいました。するとたちまち、今までとは別人のように言葉がすらすらと出てくるようになって、賢い振る舞いができるようになったのです……。


『巻き毛のリケ』(シャルル・ペロー)

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