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ろづ
コロリの三つ子と亀ちゃん

「あ、待つで候、ネイム〜!」
「ここから先は通さん……でござる!」
 黄色と緑のサーベルタイガーと黒と紫の狼に道を塞がれ、赤と茶色の狸……ネイムは不満げに唸り声を上げた。
 型を同じくする三体のうちの一体、言うなれば三つ子の一番下にあたるネイムは、自分を邪魔する兄二人を見る。どうやらビーストモードのネイムが咥えている、本日のおやつが目当てらしい。
「兄者たち、あっしの邪魔をしないでもらいたい……あっしは今、重大な輸送任務の真っ最中」
「あ、それは出来ない相〜談〜で候〜」
「この世は弱肉強食、でござる! 横取りされるも、また、宿命……でござる!」
 プリン味のエネルギーパックを巡って何を言っているのやら。
 ばちばちと火花を散らす三つ子を、兄であるギンザンが遠巻きに眺め、呆れていた。
 ネイムが忌々しげに舌打ちをし、走り出す。今はこのエネルギーパックをあるべき所へ運ぶのが先決。兄たちに構っている暇などないのだ。
 しかしそれを兄二人が許そうはずもない。すぐ様追いかけられ、両脇を固められてしまった。
 それでもネイムは走る。渡すわけにはいかないのだ。これは。このプリン味のエネルギーパックは。大切な……。
「とぉう!」
「てい、でござる!」
「おわぁ!」
 虎と狼にのしかかられ、勢いを殺せず倒れ伏す。その拍子に口からエネルギーパックが転がり落ちたのを、タイガマルは見逃さなかった。
「今で候〜!」
「ああ、兄者たち何てことを!」
 抗議するネイムに目もくれず、おやつを奪おうと近寄るタイガマル。の、鼻先で、プリン味のおやつが取り上げられる。
 見れば、彼らの生みの親であるダイクーン教授がエネルギーパックを拾い上げ、困った悪ガキどもに苦笑を浮かべて立っていた。
「これはテンコンスリポンの物だ。ネイムに持ってくるよう言ったが……横取りは頂けないな、お前たち」
 だから重大な輸送任務だと言ったのに、とむくれる狸のバトロボに、虎と狼のバトロボがしょげた様子で項垂れる。おやつ強奪に失敗した挙句父に叱られたのだ。拗ねたようにそっぽを向いて、ネイムに謝ろうともしなかった。
 それを見た教授が更に苦く笑う。
「お前たちにも後で渡すとも。勿論、ネイムにもだ」
 よちよちと歩いてくる小さな亀のバトロボが、自分より大きなエネルギーパックを見つけて嬉しそうに声を上げる。
 我が家の末っ子、小さな小さなテンコンスリポンが喜ぶ様を見て、そして父であるダイクーン教授の言葉を受けて、三つ子は揃って表情を明るくさせた。
「あ、今回はぁ、この辺で勘弁してやるで候」
「仲直り……でござる!」
「ええ、よござんす。まったく、仕方ない兄者たちだ」
 テンコーンという小さな声に、三つ子が腰を上げる。後で末っ子の亀と遊んでやる任務が出来たからだ。
 美味しそうにおやつのエネルギーパックを味わうテンコンスリポンに、虎と狼と狸が顔を見合わせて微笑んだ、何でもない日の午後。