よろづ
タイガマルの場合
「タイガマル! 私、タイガマルのこと、大好きよ!」
猫のバトロボであるネイムが、自分の思いを打ち明ける。
直球勝負に出ることにしたようである。
タイガマルはこう見えて結構ボケの強い性格をしているから、遠まわしに言っていてはいつまでたっても理解してもらえない可能性があるのだ。
「とっても、愛してるの!」
本当に大好きよ、と重ねて言う。いつも相棒の黒い狼と行動を共にする黄色い彼を、一人だけ引っ張ってきての告白である。
とても重要な意味がある事くらい察してくれるだろう。
……いや、どうだろう。察せないかもしれない。どんな状況でも変わらず狼と二人して同じ方向性でボケているような彼に、雰囲気を感じ取る機能はないのかもしれない。
察してもらえないなら、何度でも告白するだけだが。
恋する乙女はしぶといのだ。
「大好き! 大好きよ、タイガマル!」
「おぉ〜……そうかそうかぁ、俺様も、お前は、あ、気に入っているでぇ、候」
ニコニコしながら頭を撫でてくる歌舞伎口調のサーベルタイガー。どうしよう、微妙に違う方向で伝わっている気しかしない。
「ほ、本当に! 世界一! 大好きなの!」
「俺様も、ネイムの事は好きで候」
「ほ、本当!? どのくらい?」
こうなったらグイグイと強引に近づいて、言質を取るくらいしかない!
そして強制的に意識させるしか、手は……!
どのくらい、と尋ねられたタイガマルがきょとんと瞬きをする。ううむ、と悩む声。そして、ええとなぁ、とゆっくり声を出した。
「まず、一番が、あ、プロフェッサービッグバンであろう?」
あ、駄目だ。番付に創造主が出てきている時点で方向性が全然違う。
「でぇ、二番目がロウガマルで候〜」
いやもう、ただの家族番付じゃないか。付け入る隙がないやつじゃないか。
「三番目が、ううむ、ギンザンと、テンコンスリポンで、同〜率〜に、なってしまったでぇ、そうろう」
まあ、しょうがない、しょうがない。家族最優先なのはどこのバトロボも同じことだ。
「それから、肉味の固形エネルギィ〜が、四〜番〜目で候」
食べ物に負けたらもう脈ないだろ、これ。
「……あー、タイガマル、虎だけにね、お肉、好きなんだね」
「そうそう、あ、濃い目の味付けが好きなのでぇ、候! なかなか出してはもらえぬがなぁ、かっかっか!」
でも、諦めない。いつか気づかせる。熱烈に、アピールは怠らない。
負けるもんか。
少し物悲しいが、ネイムの果てのない努力の旅路が今、始まったのだった。
……水泡に帰すことのないよう祈りたい。