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ろづ
ギンザンの場合

 白鳥のバトロボであるネイムは、前回のバトロボマッチで出会って以来、ギンザンに惚れ抜いていた。
 凛々しく、精悍で、たくましく、そして勇ましい。美しさすら感じる造形は、まるで神話に出てくる生物のように思えた。
 一度でいいから話してみたい。
 いや、この思いを伝えたい。
 翌日に決勝戦を控えた彼を呼び出すのは心苦しかったが、この戦いが終われば彼らはまた別のトーナメントに出るため移動してしまうというじゃないか。
 今この思いを告げずに離れてしまったら、後悔するに決まっている。
 思い切って電子メールを出し、ぜひ、と場所を指定して彼を呼び出した。ややあって返事が返ってきた。OKと。
「ご、ごめんね、呼び出したりして」
 緊張の面持ちでネイムがギンザンと対峙する。対するペガサスのようなユニコーンのようなバトロボは、涼しい顔だ。
 冷静にネイムのことを見ている。冷たくも熱い眼差しに胸が高鳴ってしまう。
「用件は何だ?」
 静かに尋ねられた言葉に、ネイムは大きく頷いて、意を決したように話し出した。
「は、初めて見たときから、その、あなたのことが気になってたの! とても、格好良くて、その、戦いぶりもとても素敵で……だから、あの」
 大事な一言が出てこない。
 どうにかしてこの熱い気持ちをぶつけなければ。クールな彼には似合わないかも知れない焦がれるような告白を、そう、受け止めてもらえなくてもいいから、ちゃんと!
 愛してる。
 そう伝えようと顔を上げた。
 そしてギンザンと目が合った。
「……そうか、有り難う」
 しっかりと此方を見つめる彼が、少しだけ笑っているような気がする。彼の目つきは真剣そのものと言った風で、きりりとネイムを見つめて、強張った体をほぐしもせずに立っていた。
「俺も、お前のことはなかなかいいと思っていた」
「え……ほ、本当?」
「ああ。仲間との連携のタイミングがスムーズで、気をつけていないと不意打ちを食らいそうになる」
「……え?」
「それに、白鳥の羽を模した大剣を振りぬく様は圧巻だったな」
 ネイムは気づく。
 何も伝わっていないと。
 真剣な様子で此方を見ていたのは他でもない。
 ネイムのチームが決勝戦の相手だからだ。
「ぜひとも本気で戦ってみたいと思っていたところだ。ネイム、明日の決勝戦、楽しみにしているぞ」
 じゃあな。満足げに立ち去る彼の後姿が、本当に誇らしそうなので何も言えない。
 ならば、せめて、満足いく明日を提供するほかないだろう。
「……お、男って……男って……」
 でも好きなのだから余計に悔しい。