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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ろづ
笑んで眠れ 1/3

 ナマエはその日、友人二人と引州升という場所にやってきていた。クルーズ旅行だったのだが、海が荒れて船を止めざるを得なかったのである。船の中はめちゃくちゃだった。固定されている家具は無事でも、あちらこちらに観葉植物の葉や土が撒き散らされ、厨房では食材が宙を舞うほど揺れに揺れたからだ。
 船内の掃除が必要だ。そこで近くの町にある港へ船を止め、船員が町の住人と交渉し、海が静かになるまでの間……いや、船を掃除し終えるまでの間だけでも滞在させてもらえることになったのだった。
 町の住人はあまり社交的ではないようで、船から下りてくる客人たちをじろりと見ては顔を伏せてしまう。海が荒れなければきっと出会うこともなかった人々だ。警戒しても仕方がない。
 なんだか生臭い町だったが、漁業が盛んだと聞いたのでその影響だと納得した。
 ナマエは友人たちと格安のホテルに泊まることにした。他の客人たちは食事つきの広い宿に宿泊することにしたようだが、ナマエたちはクルーズ旅行の代金を払うだけでいっぱいいっぱいだったのだ。

 翌日のことだった。広いほうの宿に宿泊していたうち二人が消えたのは。
 海はまだ荒れている。船の掃除も思うように進んでいないようで、船員たちの苛立つ声が聞こえる。ナマエは大きくない町の中、同じ旅行を楽しんでいたはずの客を探して回っていた。
 友人たちも同じように町を歩き回っている。いた? と問いかけると、首を横に振られた。

 さらに翌日のことだ。友人のうち一人が消え、高いホテルの宿泊者が全員いなくなった。
 船を掃除していた船員と操舵手もいない。
 宿から出て探し回ったが、やはり見つからなかった。
「……絶対、おかしいよね?」
 友人に問われて、ナマエは頷く。
「この町、何かあるよ」
「うん……町の人も雰囲気おかしいし」
「黒魔術的な?」
「やめてよナマエ! 本当、そういうの好きだよね!」
 友人が声高くナマエの肩を叩いて言う。
 それにぴくりと反応したのは、町の住人だった。
 じろりとナマエと友人を見る。のろのろとした動きで迫ってくるのが分かる。ナマエは友人と顔を見合わせた。
 まさか。
 本当に?