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ろづ

 黄色と緑のロボットが背後に立っている。
 あんまり立たれても集中の妨げになる。振り向いて注意をしようとして驚いた。
 顔がすぐ近くにあったからだ。
「俺様の片割れに、何をしているので候?」
「うまく歩けないっていうから、メンテナンスしてるんだけど」
 タイガマルは歩けなくなっていないのか、と尋ねるが、首を横に振られた。
「うまく物を掴めないだけでなぁ」
「……充分メンテナンスの対象だよ」
 恐らく、前回の試合でずっと上下合体の姿だった影響だろう。確かタイガダブルファングだった。収納されていた分の手足は無事だったというわけだ。
「関節部分に異物が挟まって、それがきっかけで配線が切れ掛かってたみたい」
「かたじけない。いつもは自分たちで何とかしているのでござるが……」
「プロフェッサーは?」
「この程度でプロフェッサービッグバンに頼るのも申し訳ないでござる」
 セルフメンテナンスができるというのにも驚きだが、主人を気遣って頼れずにいるというのも驚きだ。バトロボと言うのは良くも悪くも主人任せな所があるとばかり思っていたナマエには、二人の高性能さと変なところでの気遣いに言葉が出なかった。
「ナマエ、次は俺様の番で候」
「はいはい、念のためロウガマル同様、全身スキャンするよ?」
「あい分かったぁ」
 診察台のようになっているメンテナンスのテーブルにタイガマルを載せて寝転がらせる。電波スキャンで体をくまなく調べてみたが、上半身の疲弊以外に異常はなかった。
 疲労部位が下半身を担当していたロウガマルとちょうど反対だ。
「肩口の電気信号が弱いね……ここの回路が調子悪いから掴みにくいのかな?」
「主電源を切ったほうが、あ、良いのかぁ?」
「プロフェッサー相手でもないのによく主電源を切るなんて提案できるね」
「ナマエはプロフェッサービッグバンの遠い親戚だからなぁ」
 かかと笑うタイガマルに、すっかり調子が戻った様子のロウガマルが頷いている。ナマエはそれだけでナマエを信用する二体のバトロボに苦い笑いをこぼした。
 プロフェッサービッグバンことダイクーン教授の遠い親戚ではあるが、実力は彼以上にあるわけではない。まだ足元にも及ばないというのに。
「痛覚を切っておいてくれればすぐに処置するから」
「さすがは、あ、プロフェッサービッグバンの遠い親戚ぃ」
「煩いなぁ……」
「褒めてるのでござるよ?」
 ナマエにとっては褒め言葉ではない。何かと彼と比較され、肩身が狭い思いをするだけだ。だからこそ苦笑こそすれ本気で喜ぶわけにいかない。
「いつか名メカニックになってプロフェッサーに追いつくんだ」
「あ、それは当分無理で候」
「我らがプロフェッサーが誰かに追いつかれるなど……」
「あ〜りぃえ〜なぁいぃ〜」
「で、ござる」
「交互に喋らないで、頭がこんがらがる」
 当分は無理でもいつか、そのうち。この努力が実るときは必ず来るはずだ。
 タイガマルのメンテナンスを終えて片付けをし始めたナマエを見て、タイガマルとロウガマルは顔を見合わせて笑っていた。

 たまに発破をかけてやれ、と教授に言われたとおりナマエのやる気を引き出した二人の任務、成功である。

ほら、手を伸ばせ