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ろづ
過ぎたるはなお 1/2

 ナマエがはじめて恋をしたのは、ナマエが中学に上がる前のことだ。
 ペガサスだかユニコーンだかは分からないが、凛々しい彼に心を奪われたことだけは覚えている。
 そのすぐ下に喧しい弟機が二人ほどいたが、まったく視界に入らない……ように気をつけて青い彼だけを見つめていた。恋は盲目。彼が勝とうが負けようが変わらず好きだったし、これからも好きでい続けるだろうと思っていた。
 その気持ちに疑問を抱き始めたのは高校生になってからだ。
 今でもギンザンと呼ばれる彼のことを好きでいたが、高校生になったナマエはメカニックの道を進んでおり、どうにも昔のように無邪気な愛を貫けなくなっていたのだ。
 彼の関節がきしむ音、翼が展開されリボルバーに攻撃が充填されていく動力の流れ、銃撃が光を伴って相手を貫く瞬間の爆発的なエネルギー。そういったものに興味がいってしまうのである。
「先生……私は変なんでしょうか?」
 自分の師である男性に指導を求めると、男性は苦く笑ったあと、低く渋い声でこう返してきた。
「フェチズムが過ぎるな」
 ギンザンの対戦相手でありライバルの……ダイガンダーといったか、そのバトロボによく似た声の師だ。
 フェチズム。決して揶揄する目的で言ったのではないだろう。師が言うからには本当にある種のフェチズムなのだろう。
 ナマエは悩んだ。
 いわゆる、指先に色気を感じたり、走っているときの息遣いに興奮を覚えたりという、あの、限定的な性癖。それを自分も持っているといわれたのだから、それは悩むだろう。
 師の息子にあたるだろうギンザンをそのような目で見ていたとは。不謹慎というか、不義理というか。これでは教授と呼ばれる師匠にも、ギンザン本人にも、顔を合わせづらいではないか。

「それで俺様たちのところへ来るのはぁ……あ、薄〜情〜で候」
「変な趣味を暴露するサンドバッグにしないで欲しい……でゴザルッ」
 幼い頃は愛するギンザンのすぐ近くでふざけ倒しては彼に叱責されているという妬ましいポジションにいた彼らも、今では下らなくも真剣な悩み事の相談に乗ってくれるいい友人だ。
 ……嫌がっているが。
 ナマエも彼らの悪戯に困らされたりするので、お互い様である。
「だいたい、駆動〜音やらぁ、翼の根元やらにぃ、ときめくなんざぁ」
「変人もいいところでゴザル」
「あ、そ〜の〜通り〜」
「煩いな、一度でいいからギンザンをメンテナンスしてみたいんだもん、仕方ないじゃん」
 フェチズムが過ぎる。
 二人からも言われた。
 二人にとってギンザンはぶっきらぼうな兄にしか見えないようで、あいつの何がいいやらと肩を竦めて見せられもした。