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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ろづ
火炎が飲む 2/2

 酒場の仲間が次々に真っ黒焦げになって死ぬ事件が起こった。

 それはナマエを戦慄させるのに充分だったし、周囲の人間を動転させるのにもまた充分だった。
 ナマエの酒飲み仲間たちは真っ黒く、炭化して路地に転がっていたという。まるで何時間も劫火で焼かれたようだった。
 しかし死亡推定時刻、火の手は全く確認されなかったという。薄気味の悪い事件に寒気を覚えたナマエが思い出すのは、何故だか美しい笑みをたたえる美女だった。
 翌朝、ナマエと肩をたたきあって笑った友人が炭化して転がる事件が起こった。同じ酒場で、美女と共に語り合った友人だった。悲鳴を押し殺せず、涙の流れるまま崩れ落ちたナマエが、今までに焼け死んでいった知り合いたちを数えて首を横に振る。
 嘘だ。どうして。
 不審者の仕業だとしても、火の手が上がったところなど誰も見ていないのだ。捕まえようがない。絶望のぶつけようがない。
 翌朝も死体は転がった。
 ナマエと酒場で知り合った男性だった。
 これで焼け死んでいないのは、あの褐色の美女とナマエだけになった。
 周囲はナマエを疑った。炭化してぼろぼろになった死体は皆ナマエの知り合いだったからだ。警察もナマエを疑い何度も尋ねにやってきた。
「私、何も知りません!」
 絶望の色を濃くした顔色でナマエは喚く。押せば倒れてしまいそうな足取りでふらふらと家から出て行った。どこに行くでもない。悲しみを少しでも癒すために放浪しようというのだ。
 夜になってもナマエは家に帰らなかった。
 それがいけなかったのだろう。

 どこかから声がした気がする。

 においがした、というようなニュアンスの、声なき声だったような気がする。
 瞬間、あたりは異様なまでの熱気に包まれ、真っ白な光が夜道を照らした。ごうごうという音が耳をかすめ、肌が溶けそうなほどの熱を感じてナマエは絶句していた。
 ふらり、と立ちくらみを覚えたナマエを逃がすまいと、目の前の炎もまた、ふらり、と同じ方向に揺れる、その様を見たのである。
 瞬間、炎の塊はナマエにかぶさってきた。
 あまりに一瞬のことでナマエは正しく世界を認識できなかった。
 ――ナイアル――
 何故だかそのような雰囲気の言葉が脳裏によぎって、後は何もかも真っ黒に塗りつぶされたのだった。

 翌日のことである。
 通りにナマエの炭化した亡骸が転がっていたのは。
 火炎が飲み込んだのだと誰が信じようか。

 終