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〜2〜

「っだあぁぁー!物騒なもん振り回すんじゃねぇ!!」
 赤白青の三色はとても目立つ。
 烏帽子をつけた戦士は雷を操るので、すれ違う生徒達に疑われ、追われる身となっていた。
 能力を持たない生徒達が手にモップや竹箒を持ち、中には椅子だの黒板消しの掃除機だのを持って追いかけて来るのだから、たまったものではない。
 投げつけられるバケツに当たったり避けたりしながら走り回り、何とか追っ手をまいた十六夜がたどり着いた先は、妄想科の教室だった。

「……ここに隠れ……たくねーなぁ。亡女いるしよぉ」

 バケツが当たったらしい後頭部をさすりながら、教室に入ろうか素通りしようか悩む十六夜ジャックだが、遠くでは十六夜の名を叫ぶ声が聞こえる。
 視線をずらせば、まだこちらには気づいていないが、妄想科へ向かってくる高慢な表情の人物も見える。パウエルだろう。
 十六夜は急いで扉を開け、転がり込むように教室へ入った。

「あっ、十六夜君!?」
「僕たちまだ次男受け同人誌発行してないよ!?」

 それを迎えたのが、あまりにも呑気な双子だったものだから、力が抜けた。
「いや、そうじゃなくてよ……っていうか書いてたのかお前ら」
「「あ、ううん!書いてない!絶対に書いてないよ!ねっ?」」
 見事にハモった双子が、お互いに首を傾げながら確認しあうのを怪しく思いつつ、十六夜は周りを見渡す。
 元木茶瑠は十六夜をちらと見ると、すぐにゲームへ視線を戻した。北山芳は転がり込んできた息の荒い少年(?)に警戒心を抱いているようだった。
 マーキとミーシャは乱入してきたのが十六夜ジャックであるとすぐに気づき、一応デジカメを向けてみる。たきとソレイユは桜花先生の後ろに隠れている文を囲い、庇うように立っていた。
 亡女姉弟の後ろにはダンゴがおり、何かあれば誰かを抱えて逃げようと考えているようである。
 色々と臨戦態勢だった。
「あ、あのよ」
 ためらいがちに十六夜が声を出す。
「かくまって……くれねぇかい」
 雷を操る能力者である彼は、この騒ぎで真っ先に疑われ、味方がいない状況なのである。隠れる場所を、是非とも確保したかった。
 北山が、言う。
「犯人は十六夜君じゃないんだね?」
「お、おう!断じて俺じゃねえよ!嘘はつかねえ!」
 亡女相は、言う。
「じゃあ、十六夜君でカップリング考えてもいい?」
「お……ちょっと待て何だそりゃ」
 亡女心も、言う。
「そしてそれを同人誌にしてもいい?」
「ちょ、ごらてめぇらざっけんじゃねえぞ」
 そしてジャックの反応に、二人揃って言うのだった。
「「じゃあ、かくまわない」」
「鬼かよてめぇら!?」

 どうやら十六夜ジャック、彼らの玩具になりそうである。

 そして、妄想科の様子を見に陣内が走り、陣内の携帯に連絡を入れた五木により妄想科へ行くと知った栃尾もそちらへ向かい、パウエルは今にも妄想科の扉を開けそうだった。
 妄想科、大人気。
 嬉しくないだろうが。


 科学技術推進科。
 パソコンのキーボードを高速で打つ青年がいた。
 彼は真島菜園。戦士三兄弟のメカニック担当であり、この事件の真相を探ろうと、今現在、必死で画面を睨みつけていた。
「大丈夫か、真島」
 彼に声がかかる。
 同じ科の、清水省吾(しみずしょうご)が、コーヒーを片手に立っていた。
「雷の原因、分かったかい?」
「いや。まだ何の手がかりもない」
「やっぱり、あの十六夜ジャックが原因じゃないのか?あいつは短気だし、すぐに暴れるだろ。迷惑な事だよな」
「彼は違う」
 コーヒーを手渡しながら吐き捨てる清水に、真島はぴしゃりと否定する。真島は、十六夜の性質を知っている。十六夜の中身の性質も知っている。
 そんな事はしないと信じたかった。
「違う?なら、この雷は誰が落としてるんだ?あいつじゃないなら、相当な実力者か何かってことになるな」
 金色の髪を書き上げた清水は、神経質そうな笑みを浮かべ、窓の外を見た。
 晴天の霹靂は、未だに続いている。
 
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