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笑いながら嫌がらせする仲(御境/国原)

 国原文が大人しい生徒だと最初に言ったのは誰だ。
 全く、あいつのどこが大人しいものか。
 購買部で焼きそばパンを取り合ったあの日から、私とあいつの小競り合いと嫌がらせの日々は始まった。
 あいつは自己主張をしないだけで、十分性格がねじれているのだ。それを周りが認識できていないだけで。

「御境茶々彦さんへ。ずっと前から好きでした」

 花束と共に、寮の扉の前に置かれていたメッセージカード。姫に浮気の類の疑いをかけられた私は酷く落ち込んだ。
 この筆跡は、以前、偶然見かけた事のある、国原のものだ。文字の癖を隠そうともしないその根性に腹が立つやら腹が立つやら。つまり腹が立った。
 あまりにイラついたので、あいつの教室まで赴き、国原の席に菊の花を供えてやった。ご丁寧に花瓶に生けてやった、ざまあ見ろ。
 普段が大人しい(と言われている)だけに、イジメなのではないかと周囲の生徒がざわついた辺りで、国原が教室に入る。静まり返った教室で、誰かが噴出す声が響いた。
「……御境ぃ」
 ぼそりと呟く声を聞く。目には目を、花には花をだ、馬鹿者め。
 その後、私の寮部屋に煙が焚かれた状態のバ○サンを投げ込まれたので、あいつの部屋に発炎筒を投げ入れてやった。
 購買部では相変わらず焼きそばパンを取り合い、時々足を踏んづけあった。
 お互いが、お互いにだけは、遠慮なく喧嘩を売った。それほど仲良くない相手には気を遣う国原も、それほど親しくない相手には話しかけない私も、相手を見つければ問答無用で喧嘩を売るし、買った。

 お互いをイラつかせ、嫌がらせを行い、精神を溶かしあう。

 犬猿の仲である。喧嘩するほど仲がいいとはよく言うが、私もあいつも認めないだろう。そこまで親しくなったつもりはないのだから。
 毒されろ、削ってやる、そうお互い睨みあい、馬鹿のように嫌がらせ合戦を続ける様のなんと滑稽な事か。
 いや、本人達は結構真剣なんだけど。
 そのうちお互い骨まで溶かしつくほどの毒を吐きあうんじゃなかろうかと、私は思い始めた。多分、国原もいつ毒づこうかと機会を伺っている事だろう。
 カドミウムレッドに染まれ、などと優しい言葉はかけない。
 何も言わずにぶっかけるのが私達の流儀である。

 今に見ていろ、国原文。


 予断だが、バトンを姫の方に送られた時には本気で戦争を始めるつもりなんじゃないかとイラついた。
 あいつ、殺す。
 
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