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ルブルベスタと芥川と赤い霧(妄:芥川/鏡の国の国原's)

 鏡の中からずぶりと出てきた一つの影に、鏡の世界の住人は視線を向けた。
「黒鏡の嫡子か」
「久しいな」
 黒い二つの影は二人揃って歪な玉座に座しており、二人揃って足を組んでいた。
 芥川は廃墟と化した城で遊んでいる双子を見つめ、口を開く。
「やあ、ルブルベスタたち」


 三人で大きなテーブルを贅沢に使い、ティータイムと洒落込む。
 黒い髪、茶色の瞳をしたルブルベスタが紅茶を啜りながら呟いた。
「あちらはどうだい、相変わらず人間賛歌が絶えないかな?」
 チョコレートケーキを頬張りながら芥川は首を振る。
「そうでも無いさ。人ならざる者が人と均衡を保ちながら生きている」
 赤毛で金色の目をぎらつかせた方のルブルベスタが忌々しげに舌打ちをした。
「均衡? は、笑わせる。人間どもの思い上がりに付き合わされる人ならざる者の苦悩を知らいでか、ブラックラージャ」
「知っているとも、赤のルブルベスタ。けれど、その思い上がりもあちらでは打ち砕かれるよ。それがラーラの意志だ」
 半透明のゴーストたちによって紅茶が注がれるのに礼をいい、芥川はチーズケーキに手を伸ばした。相変わらず銀竜の夢をふんだんに使ったケーキはうまい。
 アップルパイにイチゴのタルトにオレンジババロア。次から次へと運ばれてくるおやつを前に怯む様子など微塵もなく、三人は会話と食事を続けていく。
「で、君の周りに面白い輩はいなかったかい」
 山積みになったシュークリームを大量に消費しつつ黒のルブルベスタが尋ねる。
「いたよ、君たちによく似た獣の子だ。僕の知り合いを脅しつけていた」
 イチゴのタルトを一ホール平らげながら芥川が答えた。
「ふん、我らに似ているだ? 強さは如何程だ」
 卵のキッシュにタバスコをバシャバシャかけながら赤のルブルベスタが問う。
「さあ、争った事がないから分からないな」
 一味唐辛子を手渡しながら芥川が返事をした。
 赤い粉がおやつの場に舞う。キッシュが赤ッシュに変わっていく。
 それを顔色一つ変えずに食べる赤のルブルベスタに、芥川が聞いた。

「ルブルベスタ・ドス、境界の銀(しろがね)姫とはうまく行っているかい?」

 直後に、盛大な赤い霧が空中に散布される事になった。
「おやまぁ」
「ブラックラージャ、貴様殺すぞ」
「おやめ、ドス。ブラックラージャを殺してはならないのが黒鏡の法だ」
 楽しい楽しいおやつ会。
 双子のルブルベスタと、芥川茶川の昼休み。
 
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