十円玉一つで骨まで呪う(四月一日)
知っている。
参加しなかった事は知っている。
分かっている。
十円玉に触りもしなかった事を分かっている。
理解している。
それでも彼女が降霊術の言いだしっぺだと。
理解している。
十円玉から指を離した餓鬼共は下級霊に取り憑かれて悶え苦しんで白目向いて奇声上げてのた打ち回って泡吹いて救急車で運ばれていった。
指を離さなかった餓鬼共はもれなく飽きた俺様の手によって未曾有の大事故に見舞われて骨折って血出して涙流して救急車で運ばれていった。
彼女だけが無事だった。
こっくりさん知ってる?とか抜かして自分じゃやらなかったこのメス餓鬼だけが。
言いだしっぺだけが無事なのだ。
不公平だろ?
あぁん?
そんな訳でついてきた。
俺様は元来せっかちだ。
乱暴するのが大好きで罵詈雑言浴びせて失神させるのが大好きなお狸様だ。
その瞬間は逃さなかった。
そいつがブランコに座ってこぎ出したのを見る。
だんだんふり幅が大きくなっていくのを知る。
だから俺様はそれを祟った。
メス餓鬼がこぐのを止めてもふり幅は縮まらない。
それどころかどんどん大きい弧を描いていくブランコに、ついに悲鳴が上がった。
愉快じゃねぇか。
言いだしっぺが逃げられるとでも思ってたのか。
公園のブランコが異常事態。
それに乗った餓鬼も非常事態。
あっははははは。
それじゃ、まぁ、さいなら。
前にでっかく突き出たブランコから、餓鬼を突き飛ばした。
ああ。
夢でも見てるかのような顔してらぁ。
何が何だか分かってねぇんだな。
分かった時にゃ手遅れだろうけどな。
ぐしゃ、と音がした。
俺様の笑い声が公園に満ちた。
赤い絨毯広げて阿呆面晒した言いだしっぺが救急車に乗せられる。
俺様の笑い声が公園に満ち満ちた。
俺様。
未曾有の大事故って大好きよ。
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