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隆正さんカワイソウ(千代松)

『今夜は外で食べないか?』
 はとこの隆正から来たメールにはそう書かれていた。
 父は外食をしない人な上子供たちに弁当を持たせる主義なので、外で食事をする機会の無い千代松には魅力的に思える文面である。
 しかし、千代松は返信すらせずに携帯を閉じた。
 命を狙って来た幹子の兄である。同じく命を狙っているのかも知れない。
 外食をしている暇があるなら課題を片づけよう、そうしよう。
 好きな人に相応しくあれるようにと気合いを込めて、千代松は教科書を開く。
 携帯が鳴った。
『重役に会わせてやる。特別に稽古もつけてやろうか』
「…また隆正さんだ」
 大切ないとこから忠告されている千代松は誘いの文章を見て眉をひそめた。
 どうあっても殺す気らしい。
 いっさい返信をしない事にしてノートを取っていく。
 家督争いの宿敵であるはとこ兄妹への信用をゼロにして近づかないようにする。
 忍としてほんの少しだけ利口になった千代松だが、はとこの目的がそれでは無い事などこれっぽっちも気付いていなかった。
 彼が欲しいのは命じゃない。

 隆正は

 両刀使いという奴である。

「また隆正さん…勉強教えてやろうか、だって。その手には乗るか」
 
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