×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
公開処刑(千代松)

 竹刀が背を打つ。
 裂けるほどの痛みに悲鳴を上げそうになるが忍ばざるを忍ぶのが俺の本業なのだ。
 歯を食いしばり滲む血にも耐え、膝立ちの状態を自力で保った。
 刑の執行人が再び竹刀を構える。
 振り下ろされた衝撃を背に受けながら、俺はいとこの気配を感じていた。


 あっという間に取り押さえられてしまった。
 俺の腕をひねり床に倒した伯父上は
「惜しかったな」
 そう仰った。
 師の寝首をかける程の忍びであれと貴方は仰いました。
 だから小刀を握り締めて貴方の寝室まではせ参じたのです。
 その首かいて野ざらしに出来たら俺は一人前だろうからと。
 失敗に終わってしまった謀反は直ぐに伝播し、取締役がやってきて俺は荒縄で縛られた。
 問題児だと思われたかな。これからの振る舞い方に変更の余地がありそうだな。
 取締役は伯父上と話をする。
 普通なら破門だとか追放だとかいう問題にもなるのだろう。
 しかし伯父上はそれを拒んだ。何故だかは知らない。こんなに駄目な弟子なのに。
 かわりに俺は皆の前で背を朝まで叩かれる仕置きを受ける事になったらしい。
 上の服は剥がされて、さらしを巻いた上体が晒される。
 左右に立つ大男に両腕をしっかり掴まれ、竹刀の雨を浴びていた。


 朝まではきついかな。
 いとこの気配を感じる。
 何処にいるのかは分からない。
 鼻も耳も痛みで痺れて使えない。
 目なんてとっくに開けられなくなっている。
 朦朧とする意識の中、気配を感じた方向に向かって笑った。
 きっといとこたちなら笑ってくれる。
 それがどんな笑顔でも良かった。
 今の俺は笑えるくらいには救いようがあるのだと思えば。
 竹刀の音が遠くに聞こえる。
 背中はきっと血だらけだろう。
 目を閉じた。
 水をかけられる。
 意識が覚醒する。
 叩かれる。
 意識が沈む。
 水をかけられる。
 滑稽だろ?
 笑って。
 笑ってくれてるよね?
 花――。


 気がつけば土蔵の中、縛られた状態で転がっていた。
 明り取りの天井窓からは月明かりが注いでいる。
 朝まで叩くと言われていたから覚悟をしていたのに、いったいどうしたというのだろう。
 土蔵の扉を見てみれば、禁固三日の刑に処す、とご丁寧な張り紙を見つけた。
 三日間は此処に転がされっぱなし、という事らしい。
 誰にも会えず、学校にも通えず、飯も食えない。
 きついなあ、なんて呑気に考えた。
 声が出ない。
 出る訳がない。
 とりあえず厳しい修行も三日の間はお休みなんだ。それは少しだけ嬉しかった。
 眠ろう。
 泥のように。
 少しでも休んでおこう。
 次はもっと上手く寝首をかけるよう。
 次の処罰は死刑であるよう。
 
top