筆記試験は苦手で御座る(御境茶々彦)
「御境茶々彦、放課後、残るように」
英語のテストが返却されると同時に、腕が異形な学生の名が呼ばれるのは、召喚従属クラスではお約束の光景だった。
「御境、返事は?」
そして教師の言葉に何も返らないのも、最早お約束と化していた。
「おい、誰か御境知らないかー」
「御境なら全速力で教室出て行きました」
このやり取りも何度目だろうか。
よく聞けば、派手な足音が遠くから聞こえて来る。もうそこまで行ったか。
英語のテストの返却の度に同じ事をしているような気がして、召喚従属クラスの担任は思わず溜め息をついた。
「……学習しない奴だな」
教師が指を弾く。
床には瞬時に魔方陣が描かれる。
遠くから、ぬあ! と低い声があがる。
「召喚従属クラスの生徒は」
魔方陣に込める力を強くすれば、陣は眩しく輝きだした。
キィン、という干渉音が響き、魔方陣が何かを呼び出そうとしている。
「召喚師には勝てないだろうが」
召喚術で、何処にいても呼び出せる。
それが召喚「従属」たる由縁だ。
「なあ、御境?」
魔方陣のまん真ん中で尻餅をつく学生に問えば、苦笑いと諦めの声が返ってきた。
御境 茶々彦。
100点満点中。
4点。
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