そうじゃないのに(砂波銀・ハングマン/サラダ)
「炎を扱う場合は周囲に注意して、誰もいない事を確認する必要がある。OK?」
「おけくない」
背の小さな義妹に能力を扱う上での注意点を教えたが、OKを勝手に動詞化して否定化までした返事が聞こえて終了だった。
理解できなかったのか、しゅーいにちゅーい、という駄洒落っぽい部分だけを反芻するサラマンダーに溜め息が漏れる。
「だぁから、お主の能力は危ないと言うておる」
「のーりょくは、だれのでも危ないって、せんせーが言ってた」
それは正論なのだが、能力を制御できないまま感情に任せてぶっ放すこいつに言われると腹が立つ。手前は迷惑かけんように制御しとるもん、と不機嫌になったが、今は目の前のチビに気をつける事を教えるのが先決だ。
「誰でも危ないなら、誰もが自分の能力に気をつける必要があるよな?」
そう尋ねると。
「サラダは、きおつけるより、火をつけるのがじょーず!」
えっへん、と胸を張り、妹は言い放った。
そうじゃない! そうじゃないのに!
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