国原の昔話(国原文)
昔からそうだった。
うちは昔から化け物の一家と言われていた。
父さんも子供の頃から化け物と呼ばれたという。
じいちゃんとばあちゃんは従兄弟同士での結婚で、それは何故かというと、他家から交流の断絶を願われていたからだそうだ。
じいちゃんは能力を異端視されたばかりに兵役を免除され……つまりは国民だと認められず、しかしそのお陰で生き延びる事が出来た。
食料は貰えなかったから盗んで食べていたというが。
そんな訳で、うちは昔から化け物の家系だった。
五つの頃、母親は私と家族を捨てて出て行った。
「あなたなんか産むんじゃなかった!」
大きな荷物を持った母親に軽蔑したような視線を向けられ、五つの私は返す言葉も知らず、いってらっしゃい、と二度と帰ってこないのだと感付きながら呟くしか出来なかった。父さんが泣いた。
「ごめんねぇ……ごめんね文ちゃん、パパのせいで、ごめんねぇ……!」
父さんのせいじゃないと分かっていたので、父さんを許した。じいちゃんとばあちゃんが辛そうだったので、私は辛くないと言った。
幼い頃から石を投げられ、唾を吐かれるのが常だった。村八分に近い扱いを受け、私は町の学校に通わせて貰えない。
父さんが毎日、車で隣町の学校まで送ってくれた。いつも忙しい思いをさせてしまうから、申し訳ない気持ちでいた。
ある日、小学校の上級生に能力の事がばれた。私が何かに驚いた拍子に火花を散らしたのがきっかけだったから、きっと自業自得なのだろう。
お化けだお化けだと嘲笑混じりで殴る蹴るをされ、私と、私の中にいる兄弟は自分の身を守ることを選び、そいつを睨み。
「やめて!!」
……体が震える。雷は怖い。
自分が放出した光が怖い。
私を掴んで振り回そうとした上級生の両腕が、黒く焦げてしまった。痙攣を起こして白目をむいて、およそ人のものとは思えない声をあげて泡を吹いている彼を見て、私は私の能力を酷く恐れた。
人を、殺せるんだ。
私の力は、人を殺せる。
涙が止まらない。
家に連絡が行った。
すぐに父さんが迎えに来て、私を抱き締めて一緒に泣いてくれた。
それから、『私』のほうは放電が苦手になった。
『俺』の方は構わず放電していたから、きっと、あの時点で覚悟を決めていたんだろうと思う。
周りを殺してでも家族を守る覚悟を、決めていたんだろうと思う。
そんな訳で、うちは昔から化け物の家系だった。
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