ぽろりもあるよ、夏祭り(国原文)
白いモフモフが顔を覆う。そのモフモフは突然彼に襲い掛かり、そして鳴き声を発するのだった。
「ニャー」
「な!?え!?もしかしてルークんとこのビショップか!?何でここに!」
赤茶色の髪の少年が驚いて声を上げる。彼の顔に密着したモフモフのせいで周りが見えない。焦ってモフモフを掴もうとした。
が、思いのほか白いモフモフはやわかったようで、彼の手で簡単にポロリとちぎれ、真っ二つになってしまったのだった。
「う、うわぁあーっ!ビショップがぁー!!」
涙目になり叫ぶ彼こと雨宮君の前には、割り箸を持った国原の姿。
叫び声をストップし、冷静になって割り箸の先を見てみれば、先程のモフモフが刺さっているではないか。
雨宮君の手には、そのモフモフの片割れ。
「わ……綿あめ……?」
引きつった声で確認すると、隣にいた笹川君が、耐え切れないといったように噴出した。二人にひっついていた谷は、ぽかんとした顔で綿あめと雨宮君を見ている。
国原が、口を開いた。
「ニャー」
「文ちゃんの仕業かー!」
「甘い匂いで分かるだろ!」
国原に突っ込む雨宮君。雨宮君に突っ込む弾米君。
国原はドッキリが成功したのが嬉しかったのか、ニヤニヤ笑ってぬいぐるみのウサギを万歳させていた。
「お前いつから遊ばれるような仲になったんだよ」
面白そうに笹川君が言う。雨宮君は苦く笑い、ちぎれた綿あめを口に含んでいた。舐めた先から焦げたような色合いになる、甘いモフモフ。手がべたつくのを我慢していると、悪戯の仕掛け人である国原が出店で水を買ってきた。
「どうぞ?」
水を自分のハンカチにかけて、雨宮君に手渡す。
半分残った綿あめをぱくつきながら、国原は言った。
「ねえ、みんなでお祭り見て回ろうよ」
「五人で行くの?わーい!」
谷がはしゃぐのを見て、笹川君が微笑む。国原や谷は恐らく分からないだろうが、雨宮君には十分に伝わる笑みだっただろう。
「で、何処を見るんだ?食い物ばっかじゃなくて遊びもしたいよな?」
弾米君が提案してくれたそれに、不満を覚える者などいない。
五人はざわつく祭り囃子の中、出店に囲まれた道を見回し、ゲームでも企画していそうな屋台を探していた。
連なる提灯に照らされる五人のうち、雨宮君が言う。
「くじ引き見つけた!」
さあ、目的地は決まった。
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