祭りと電気使いと電気鼠(国原文)
「弾米君は、何食べる?」
ピ○チュウのお面を頭に乗せ、国原が尋ねる。いつものボーッとした表情は何処へやら、にこにこ笑っていた。祭りが楽しくて仕方ないらしい。
手には吊り上げた白色のヨーヨー。
嵐ヶ丘君に話しかける五木と、笹川君と雨宮君にりんご飴をお裾分けしに行く谷を眺めながら、国原は上機嫌だった。
「祭り、好きなのかよ?」
何とはなしに弾米君が尋ねたのに、国原は小さく頷いた。
「祭囃子とか聞くと……わくわく、するんだ」
多分、国原の中で十六夜が興奮している分も含まれるんだろう。
国原は、十六夜の姿で祭りに来られない事を、少し残念に思っていた。
きっと片割れならば、全力で出店を片っ端から回るだろう。遊び倒して、兄に怒られながらも楽しみきって、せっかちかつ充実した日にする事だろう。
祭りが大好きな彼に、表立って楽しませてやれないのは、申し訳ない気がした。
「なんか意外だな。国原って大人しいイメージあったし」
弾米君が言う。
いや、悪い意味じゃねえから。と付け足してくれるので、国原は顔を綻ばせた。
この面子は周りに気遣いをしてくれる人ばかりで、何だか楽しいのだ。
「よく、言われる。でもさ、人は見かけによらないんだよ」
くつくつ笑いながら言う国原に、弾米君は幼馴染を思い出しているのだろう、ふと口角を上げた。
「ま、確かに」
「うん。……あ、たこ焼き」
屋台から良い匂いが漂う。国原が指差し、頭のピカチュ○がたこ焼き屋を凝視している。国原、その○カチュウちょっとずらせ。なんか怖い。
「弾米君、食べる?……私、食べるけど」
夏祭りは始まったばかり。
暑くも涼しい空気に包まれて、祭囃子が風に乗る。
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