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次男の生首がスポーン事件(十六夜ジャック)
 回廊産の雑魚を蹴飛ばし、赤白青の少年が走る。黒い悪夢の腕が時々足を掠めるのだが、もしかして『声聞く限り女じゃね?いやでも何かがさつだし、服装あれだし、男じゃね?』のような困惑から攫えずにいるのだろうか。
 申し訳ない。
 そんな黒い悪夢の戸惑いに気づくことなく、十六夜は走っていく。
 下駄の音を聞きつけ、紫色と赤色の集団が寄り集まるのを蹴飛ばし、殴り飛ばし、破片にしながら。
「邪魔だどきやがれ雑魚共ぉ!」
 放電できるだけの体力は回復していないらしいが、それでも声で威圧すれば雑魚はびびるようだった。怯んだ隙に拳を見舞い、人の気配がする場所へ近づく。
「冠橋いるか!?」
「うわっ!?」
「な、何!?」
 モブ山モブ男とモブ田モブ子の群れに声をかけ、灰色の二つ結びを探す。いないと判断すると行儀悪くも舌打ちを一つし、すぐに走る。
 それを何回か繰り返した。
 途中、雑魚共に張り倒される事もあったが、それでも止まらずに進むと決めたので走り続けた。
 息が荒くなる。壁に手をつく。一休みしたらまた走ろう、と屈んだその時、頭に衝撃が走った。

「ふぁー」

「ってお前かよ!よりによって一番の雑魚かよ!」
 頭に突撃してきた勇敢なピンク色は、心なしかキリッ!みたいな顔をして浮かんでいる。ハートは、よし、やったぞ!とでも言いたそうな様子で胸をはり、十六夜を見下ろしていた。
「……むかつく……」
 たまたま開いていた窓から、風が流れ込んでくる。得意げに風に乗り、逃げていくピンク色の敵を座って見送る十六夜は、しばらく風にあたり、火照った顔を冷やす事に……しようとして、勢いよく立ち上がる。
「な!?……何で風が顔に当たってんだ!?」
 慌てて足元を見れば、ピンク色の突撃大作戦(仮)の際にすっ飛んだのだろう、隈取が施された生首がゴロンと転がっていて……少々気持ち悪かった。
 なんか、いきなりヒャヒャヒャヒャとか笑い出しそうな気がした。
「んな事考えてる場合じゃねえし!」
 急いで拾う。そして頭にすっぽりと被る。
 流しの様な手洗い場が鏡の代わりになり、赤髪の少年が赤髪のマスクを被る所が映っていたのだが、十六夜はそれに気づかない。

「誰にも見られてねえよな……?」

 とりあえず辺りを雑に見渡すと、ため息を一つついた十六夜は再び走り出すのだった。
 
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