×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
次男は再捜索を開始する(十六夜ジャック/リジェクト)

「お前ら、要らねえ奴になっちまったのか」
「君達のせいだ。君達が僕らの邪魔をしなければ、居場所を失わずに済んだ」
 放電のせいで大半のボールが破裂し、競技のスコアボードは真っ二つに折れ、跳び箱や平均台は砕けて焦げている倉庫内。
 膝を抱くようにして泣くリジェクトに、十六夜は恨み言をぶつけられていた。
「んな事言われてもさ、俺らだって学園狙われりゃ喧嘩買うしよ」
「煩い」
「うるさ……お前なぁ」
「十六夜ジャックって言ったっけ?何度も言うけど、君に勝てば僕たちは居場所を失わずに済んだんだ。あいつらは僕にとって唯一の肉親も同義だったのに。君が余計な真似ばっかりするから……」
 頭を抱え、死ぬ、あいつらが死ぬ、そう呟いて泣き続ける骸骨が、誰も恨むことのできない現状で次男に当たる。
 十六夜は困惑していた。そんな絶望的な状況にあるとは思って居なかったというのもそうだが、リジェクトはあまりにも背負いすぎていたから。
 勝負はついたのに、切り替えが利かないタイプだったから。

「じゃあ、俺が助けてやるよ」

 十六夜は、言った。
 しばし沈黙。リジェクトは息を飲む。何を言っているんだ、という視線で次男坊を射抜き、そして、口を開いた。
「何言ってるの君。敵の癖に。頭悪いだろ。テストで最高何点取れた?どうせ20か30だろ。それくらい馬鹿だろ」
「うるっせぇな58だよ!お前が思ってる程馬鹿じゃねぇよこのバァーカ!」
「え、最高でそれなの?僕の平均点より20も下回ってるじゃん馬ぁー鹿」
「おまっ……!お、ま……だぁーっ!!むかつく!腹立つ!感電させてやろうか骸骨女ぁ!今なら三割り増しでプレゼントしてやらぁ!」
 喧嘩勃発。
 毒づく骸骨女対短気な次男坊。
 だが、話題がずれている事に気づいた十六夜が、じゃなくて!と声を荒くし、いったんストップをかけた。一時中断である。
「お前はもう回廊から見捨てられたんだろ?」
「さらっと言いやがって。むかつくね君。何かしらを拒絶してやろうか」
「やめろお前の能力チートだから。……だからさぁ、喧嘩売ってる訳じゃねぇんだってば!お前らはもう、回廊の一員じゃなくなってるんだろ?だったら、俺らとはもう敵同士でも何でもねえってこった!」

 敵じゃないなら、助けても罰は当たるめぇ。
 っつうか、敵同士でも助け合って何が悪いってんだ。

 シンプルだった。
 実にシンプルな考えで手を差し出すのが、次男だった。
 リジェクトの返事を待たず十六夜は立ち上がる。ふらつくのを堪え、倉庫から出て行こうとしていた。
「じゃ、俺、行くわ!探さなきゃいけねえ奴がいるんだよ。助けが必要になったら学園の中で俺の名前叫べや。そしたら、俺じゃなくてもさ、俺の関係者が迎えに行くからよ!」
 よろめきながら歩き出す。軽く手を上げて、じゃあな、と一言残して。
 たどたどしい下駄の音が、段々とリズムを取るようになっていく。
 ダメージを抱えたままだが、体育館を出て、少しずつスピードを上げた。

 走る。

 自分から厄介事を背負い、十六夜が再び走り出す。
「冠橋何処だぁー!ってか本当に何処だ!結構探してんだぞオイ!」
 勝手に突っ込みながら。
 
top