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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
捜索隊隊長と副隊長は走る(国原文/十六夜ジャック)

 理科準備室。
「冠橋さぁん」
 図工準備室。
「冠橋さぁーん」
 音楽準備室。
「冠橋さーん……?」
 国原は学園内を走り回り、至る所を覗き込む。
 居ないなあ、と首をかしげ、次の教室へ向かおうとしたその時。
(お前さぁ)
 十六夜が、国原の中で声を上げた。
(さっきからお前、やたら準備する所ばっか見てねえか?)
「(ああ、うん。準備室は教室の中でもマイナーだから、隠れるにはもってこいかと思って)」
(あー、なる程!そっかそっか!……って、マイナーだったら隠れ場所の候補にだって上がらねえだろ!!)
「(おー。それもそうだね)」
(お前実は馬鹿だろ!?なぁ!?)
 すてすてと走りながら内側で漫才のようなやり取りをしている学ラン女。
 廊下を走り回り、灰色のツインテールを見つけようと目を凝らす。あまりに目を凝らしすぎて喧嘩でも売っているんじゃないかという目つきになっているのはご愛嬌である。
 十六夜ジャックは彼女に嫌われている。と、二人は思っている。しかし嫌いな相手の下駄を取ってくれた上に、肩まで貸してくれた彼女は、決して悪い子ではないというのが十六夜と国原の共通認識だった。
 根は優しいのだろう。そんな彼女が泣いた。何が理由なのかは分からないが、瞳は涙に濡れていた。涙を見てしまった。放っておける筈もない。
 国原は扉を開ける。
「冠橋さぁーんっ」
 社会科準備室の。

(だっかっら!準備する所ばっか探すんじゃねえっつってんだろうがぁっ!!)

 大丈夫なのかこいつら。
 
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