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- ナノ -
一人で二人の捜索部隊(国原文/十六夜ジャック)

 女子生徒が、黒いものに連れ去られた。
 廊下を走りながら、国原は黒いものの動きを観察する。
 女子ばかりが狙われる。このスケコマシが。黒いものは何を企んでいるのか。走りながら考えて、気づけば目の前に黒いものがいた。

 無視。

 お互いに素通りしあう。
 学ラン、短髪、高身長、可愛いとはいえない顔立ち。
 女の子だと認識されていないらしい。
 下駄の音でトランプ兵共を集めてしまう十六夜に代わり、国原が表へ出たのがつい先程だ。走った。十六夜以上にふらつくが、動けない訳ではない。
(冠橋ぃーっ!)
 国原の中で十六夜が喚く。
「(そこで叫んだって、誰にも聞こえないよ)」
(うるせぇな!じっとしてられねぇんだよ!)
 一人で会話しているようにも思える。痛い人なんじゃないかとも思う。
 自分自身に冷たい感想を抱く国原が、角を曲がり。
 大寺に会った。
 いや。
 倒れている大寺を発見した。
「……寝てる?」
 近づき、覗き込んだ。静かに寝息を立てて、起きる様子がなかった。
 彼女を保健室に運んだ方が良いだろうか。
 そう思ったその時、国原の中で十六夜が言う。
(兄貴に連絡入れろ!大寺は兄貴に拾って貰おう!)
 急いでいた。
「(冠橋さん優先で?)」
(当たり前だろ、あいつ泣いてたんだぞ!?)
「(こっちは倒れてるんだけど?)」
(……いや、それは)
 一人で会話しているようにも思える。痛い人なんじゃないかとも思う。
「(そう決めたんだから最後まで貫けよ、相棒)」
 どうでも良かった。
(お、おう!当ったり前だ!)
 十六夜の声を聞き、通信機のスイッチを入れる。ジャックか、と焦ったような声が聞こえた。国原です、そう答えると、苦く笑った気配があった。
 明星の説明によれば、彼らはチート包帯、というアイテムによって奇跡の回復を遂げているようだった。ずるい、と内心、二人でハモる。

「私とジャックの全部を、冠橋さんの捜索に回す。……へばるなよ、ジャック?」
(お前もな)

 電気信号を全開に、一人の二人が本気で探す。
 
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