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「#幼馴染」のBL小説を読む
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サラダとお姉ちゃんお兄ちゃんと(サラダ/マリアン)

 ごめんね、ごめんね、もうしないから許してあげて、と長女が必死に謝りながら末っ子を抱きかかえる。
 おうー、と謎の声を出し、大人しく抱えられるサラダは、マリアンの目線から周囲を眺めていた。
 ふかふか土を目下捜索中である。
「サラダ、サラダ」
 不意に手を握られ、サラダは視線を下へ向ける。狼が優しく笑い、手のひらを雨宮聡へ向けていた。
 瞬きをして狼と雨宮を見比べるサラダに、狼は教えてやる。
「ごめんねって言おうな。虫が嫌いだったんだから、見せてごめんねって。わざとじゃないって説明しよう、サラダ?」
 決して叱っている訳ではない事は、確りとした眼差しで分かる。
 サラダは雨宮に顔を向け、右手に乗ったセミを見せないように、マリアンの肩に乗せる事にした。
 いやぁ、ちょっと!と姉の悲鳴が聞こえたが、それが何故なのかは分からない。
「あまみやー、ムシきらい?」
 友達だと思った相手はとりあえず呼び捨てにするサラダは、何も苗字の方を選ばなくても良いだろうにそちらで呼び捨てる。
 それに怒った風でもなく、彼は苦く笑って答えてくれた。
「うーん、好きか嫌いかで言えば……大嫌いかな?」
「ごめんねー」
「良いよ。わざとじゃないんだろ?」
「わざとじゃないよ」
「サラダだっけ?虫、好きなの?」
「えーとね、ふつー」
 優しい口調で話しかけてくれる雨宮に、サラダはお友達の認識を強くしたようである。マリアンが肩に乗っている死せるミンミンに怖気を覚え、早く取って頂戴よ、とサラダに言うが、サラダは駄目だと首を振った。
「あまみやがねー、きらいだから、だめ!」
「あたしだって嫌いよ、虫!」
「ごめんねー」
 謝れば良いとか思っていないか、この末っ子。
「あーあ、さはぎんだ」
 しかも突然校庭を指差して次子の名前を出す始末である。
 あーあって、見つけちゃ駄目だったみたいじゃないか。
 しきりに謝るマリアンと、ほら、バイバイしような、と指導してくれる狼の二人に保護されて、サラダは雨宮に別れを告げるのだった。
「あまみや、ばばーい。こんどさー、ムシじゃないの見せてあげよっか」
「ばいばーい。ま、機会があったら頼むよ」
「はーい、かしこりました!」
 ばばいだの、かしこるだの、謎の日本語を駆使する火蜥蜴である。

「……本当にプールにいるんだな」
 グラウンドに出て、サラダの指差す方向へ目を向けた狼がそう呟いたのだが、それはまた別の話。
 かも知れない。
 
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