陣内が少し本気で怒った話(十六夜ジャック/陣内陣内)
ぎし、と生活指導室のソファが軋む。
ソファの端には陣内が足を組んで座っていた。
「う、くっ……先生……も、駄目……!」
反対の端で、十六夜ジャックが苦しげな声をあげて、仰向けに寝かされている。
逃げようともがいているのかソファの縁に手をかけ、荒い息遣いで、弱弱しく首を横に振っていた。
「せんせ……嫌だ、痛……いだぁ……!」
弓なりに反る彼は、きつい目つきで見下ろしてくる担任に懇願するかのように手を伸ばし、ひぃ、と小さな悲鳴を上げる。
痺れるような痛みが、股の付け根を襲ったからだ。
「ああぁっ!いだっ!痛いってば先生!嫌だ!抜いて……抜いてくれよぉ!」
「十六夜、分かっていないのか?これは仕置きなんだ」
涙声で訴え悲鳴を上げる十六夜に、陣内は冷たく、厳しく返す。
びくり、と十六夜の体が震えた。悲鳴がいったん止まる。
それを見計らい、陣内は更に強い力で締め上げ、更に逃げられなくしてしまう。
痛みと羞恥に泣きそうになる十六夜は、本当に塞げている訳ではないのだが、口を覆い、声を殺そうとする。許して貰えない事への恐怖が、今更ながら彼を襲っているのだった。
「十六夜……反省できているのか?」
陣内の厳しくも静かな声が部屋に響く。
一生懸命に、滅茶苦茶に、がくがくと激しく頷く十六夜だが、陣内はそれを見ても許した気配を見せない。
十六夜の下半身に、更に強い痛みが襲う。十六夜の涙に濡れた悲鳴が部屋の空気を震わせた。
「うあぁあっ!あぁっ!やだ……裂ける!裂けちまう……先生!!」
壁に、床に、むなしく吸い込まれていく悲鳴を聞きながら、陣内は冷静に一言呟いてやる。
静かに、諭すように、淡々と。
「悪い事をしたら、何と言うんだ。十六夜」
電撃を操る少年の、落雷にも負けない叫びが、直後に響き渡った。
「ごめっ、なさ……ごめんなさいっ!!ごめんなさいぃあぁぁっ!!」
最後はもはや泣き声でしかない。じたばたと上半身だけで暴れる彼に、陣内はようやく優しい目つきをし、薄く笑った。
柔らかな笑みでそっと力を緩めてやれば、泣き声も弱まり、肩で息をする少年の姿だけが其処にある。
そして陣内はゆっくりと足組みを解き、4の字固めから抜いてやるのだった。
「教室内で二度と放電はしないと誓えるな?」
「……誓わなかったら、またコレやられんのかよ……?」
「よく分かっているじゃないか。その通りだ」
「ひ……!金輪際何があってもぜってぇしません!!」
「宜しい」
室内で雷をぶっ放し、窓ガラスをお釈迦にしてしまった次男坊と、担任の話。
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