桃クナールEX完
「うわ!」
スプレーの噴射口からあふれ出るオサナクナールを浴び、悲鳴を上げる女性がいた。
しまった、という表情でその女性を見る白子。
見る見るうちに体が縮んでいき、手足と体の対比が幼児期のそれになっていくのを見ながら、スプレーを噴射した張本人である桃桃は両の頬を抑えて目を輝かせていた。
「いやぁ〜んv」
いやーん、と言いながらも全く困った様子のない声だ。むしろ、これは萌えている。
自身の手足を見ながら困惑している女性は、目線を上にあげて、桃桃を見た。
「先生……これって」
「オサナクナールEXよんv あのね、飲まなくても効果が出るようにしたの。だから、EXなのんv」
服も一緒に縮むようになっているらしい。そこまで計算されているからEXなのだろうか。どうでもいいが。
「何という事だ……申し訳ない」
白子が眉間を押さえながら謝罪するのに、小さくなった女性は手をひらひらさせながら返した。
「あー、気にしないでください。桃桃先生のやることですから」
慣れっこか。
なんという順応力の高さ。
「ところで、これは何時になったら戻るんですか?」
くるりと一回転しながら尋ねる女性、いや、少女に、桃桃はうっとりする。可愛いわぁんv ととろけそうな声を出し、その少女をじっと見つめていた。
「三十分ほどで戻るそうだが……」
「そうですかー。なら問題ないしょや」
首をかしげて微笑む少女。五つか六つか、そこらの年頃になった彼女は、ちと不便になったけど、といいながら白子を見る。
「知能が下がっていないというのは珍しい例だよ」
白子が言えば
「どっかの名探偵みたいですね」
ころころと少女が笑った。
のを。
「きゃああぁぁぁぁあぁっ!!」
絶叫した桃桃桃子のハグが襲った!
「ちょ、桃桃せんせ……くるし……!」
「可愛い可愛いかぁわぁいぃいぃー!! 桜花、あなたって、なんてエクセレントなのぉーっ! 萌えよ! 萌えの塊だわぁん!」
スプレーを放り出して彼女こと桜花先生に頬擦りをし、抱き締め、くるくる回転しだした姉を冷めた眼で見る白子。
わあわあわあ、と驚いたような困ったような声をあげて抱き締められている桜花先生。
桃子は他の事などどうでもいいという風に桜花先生を構い倒し、萌えを堪能したという。
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