白三と軽助
「やあ、軽助くん」
嫌に爽やかに現れた狐に、狸は一言、かえれ! と言い放った。
一平屋家の母が催した食事会に誘われた白い狐は勿論帰るはずもなく、今は軽助の部屋で寛いでいる。
散らかった部屋を整理したり、誰のものか分からない品を一つに纏めたり、白三は何とも楽しそうに片付けを手伝っていた。
「こうして誰かを構っているのが、楽しくてね」
朗らかに笑う狐。
知った事か、と狸は内心で呟いた。
しかし、特別好きというわけではないが嫌っているわけでもない相手にそこまで言うのも躊躇われる。
ベッドに横になり、窓の外でちらつく雪を眺めながら、軽助は軽く息をついた。
「構ってくれるついでに、冬休みの宿題もやってくれやせんかね、狐さんや」
「宿題? そういった物が出ているのかい?」
よし、分かった。
勢いをつけるようにそう言った白三は、嬉しそうな笑みを浮かべている。
本当にやるつもりか、と顔をうかがう軽助。
そんな軽助に、白三は胸を張ってこういった。
「なら、私が勉強を見てあげよう!」
「結構です」
「そういわずに。どこか分からない部分はあるかい?」
肩を並べて、勉強開始である。
ゼロ距離で、何の緊張感もなく勉強を教え始める白三に、軽助は溜め息を一つついた。
人を構うのが好きな狐は、こうして構われもしているのだ。
「んじゃあ、ここ」
「ここか。これはね、金属と炎の反応が……」
軽助に向かってにこやかに笑いかける白三。
仲の良いその様子を見て、上の兄二人がぎりぎりと警戒心を強めていったとか、いないとか。
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