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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
ポテチ食う悪魔
『アバドンさまアバドンさま』
 高い声で緑色のイナゴが鳴く。安部稲子の頭の上に乗っかってくる虫は顔を覗き込もうとしているのか前に前に進んできた。
『アバドンさま』
「……うーん……安部さんか稲子さんって呼べない訳?」
『アバドンさま』
 あ、そうですか呼べませんか。がっくりと肩を落とす稲子に緑色のイナゴが言う。
『七つの大罪が授業をまともに受けません』
「いつもの事じゃん」
 廊下でばりばりとポテトチップスを頬張る稲子。これで三袋目である。
 告げ口のような事をしてくるイナゴは、安部稲子の部下である。茶色のイナゴとコンビを組んで悪魔たちを監視する仕事についている。
 何故イナゴが監視などしているかというと、安部稲子が仕事を放棄しているからだ。そもそも七つの大罪の監視はアバドンとして目を覚ました稲子の仕事だったのだが、その仕事の重要さも危険さも分かっていながら、いや、危険さを分かっているからこそ、稲子は拒絶したのだ。
 面倒くさいのでパス。とか言っていたような気がする。
『アバドンさま、七つの大罪が険悪な雰囲気です』
「代わりに仕事してくれるのはいいんだけど、何で一々私に言うの」
『アバドンさまなので』
 自分が仕えている主に全ての報告をしようと複眼を煌かせている大きな昆虫は、教室の中から聞こえる叫び声や破壊音を足についた耳で聞くと、すぐに足元にいる主に声をかけた。

『アバドンさま、教室がめちゃくちゃです』

「……ああ、うん、見た」

『アバドンさま』
「はい」
『担任の先生が七つの大罪の保護者にアバドンさまをお選びです』
「おいふざけんな」
 
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