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- ナノ -
おんころ1
 正規の方法ではなかった。
 正しい手続きを踏まなかった。
 それだけで二名の機嫌は最悪だった。

 二人はどちらかというと子供が好きだ。
 無邪気に、愚かに、先のことなど考えられず、目先の楽しさに意識を奪われ、大惨事を引き起こす子供が好きだ。
 十円玉で不幸をつれてくるのが得意な狸は、無理やり呼び出された先に貨幣も子供も、ましてやこっくりさん好きな馬鹿な大人の姿もないことに舌打ちをした。
 文字で呪いを持ち込むのが得意な狸憑きは、無理くり呼び出された先に鉛筆も文字も子供も残酷さもないのに訝しげにしていた。
 周りにいるのは、陰陽師。ご丁寧にも水干を着た大勢の陰陽師だ。
 ただ、自分たちが知っている陰陽科の生徒と違うのは、皆が皆、血走った目をしていたという事だった。
「何ですか、何ですか? 暇なんですか、私たちを呼んでみるとか?」
「くそったれの蛆虫共! 覚悟はできてんだろうなぁ!!」
 外道も四月一日も気づいていた。
 陰陽師は彼らを消してしまう気だと。
 黙れ、と水干の男が叫んだ。

「貴様らは世に害悪をもたらす! この世からいなくなった方が皆の為なのだ!」

 笑わせる。
 外道は鼻で笑う。
 四月一日は唾を吐き出す。
 汚らわしい、汚らわしいと陰陽師が唱えた。
 経文が聞こえてくる。二人の大嫌いな経文だ。気が狂いそうになるほど大嫌いな。
 地面に大きな五芒星が描かれるのを見て、二人は急いで星から逃れようとしたが、陰陽師がそれを阻む。数珠を揺らし、鈴を打ち鳴らし、透明な壁を作り上げて。
 星の真っ只中に取り残された外道と四月一日に、陰陽師たちは言った。

 お前たちほど汚らわしいものはない、と。
 
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