害賊完
上等な着物を見つけたので欲しいと言った。
牡丹柄の綺麗な着物だった。
死瀬が店から奪い取り、着せてくれた。
上等な刀を見つけたので欲しいと思った。
何に使う予定もないが欲しいと思った。
殺子がガラスを割り、選ばせてくれた。
道行く老婆が持っていた財布には金がたんまりと入っていた。
二人で襲って殺して持ち去った。
男たちが食べているたこ焼きが美味しそうに見えた。
自分たちで買わずに男たちから腕ごと奪った。
少しは須佐ノ悪様に近づけてるかしら、と殺子は言う。
まだまだだろうな、と死瀬が返す。
盗賊として生きよう。
一方は死んでいるけれど。
盗賊として生きよう。
殺して呪って奪って、憧れのあの方の真似をして生きていこう。
楽しかった。楽しかった。楽しかった。
須佐ノ悪様にはなかなか会えないけれど、それでも須佐ノ悪様を目指して手を血に染めるのは痺れるほど楽しくて、ああ、堕落しているなと二人で自嘲した。
須佐ノ悪様はいずこ?
須佐に行けば会えるだろうと思って須佐まで足を運び、そこで盗み殺しを繰り返してみたが、手がかりもなく。
事件があったと言われる古井戸へ辿り着いたその時には、そこは弱小妖怪の溜まり場になっていて。
何の用かと尋ねられたので切り殺した。
こいつらも須佐ノ悪様の信奉者だった。
お前らに会いたいんじゃない。
須佐ノ悪様に会って、一言、憧れですと。
そう伝えたいだけなのに。
須佐ノ悪様に会って、その体を、魂を。
奪いたいだけなのに。
何処にもいない。
何処にもいない。
何処だ。
須佐ノ悪様は誰に奪われた。
誰に。
ああ、お会いしたい。
須佐ノ悪様。
須佐ノ悪様。
物騒なファンが学園を見つけるまで、あと五年。
← →