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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -
切る4
 青鷺が足を踏み入れたのは、杏次郎の知り合いの拠点だった。
 暗殺部隊。
 杏次郎が出入りしているそこは、恐らく諜報部でも追いつく事の出来ない情報激戦地である。
「頼もう」
 静かに告げると、一人の男がしなやかな身のこなしで青鷺の元へ歩み寄ってくるのが見えた。僅かに、殺気を感じる。
 ぴりりとした空気を吸い込み、青鷺は顔を真っ直ぐに向けた。眉一つ動かさず、暗殺部隊が発する威圧感に負けていない事を示すように。
「此方に、杏次郎殿のご嫡男はおられませんか」
「千代松殿はきていない」
 ぴしゃりと言い捨てられる。
 青鷺は食い下がった。
「千代松殿だと、私がいつ言いました」
「……千代松殿がおられないと噂が立っていたまで」
「それにしても断定的な言い方でしたね」
 微笑むように息をつき、青鷺は暗殺部隊の男へ言う。
 男は嫌そうに青鷺を見つめたが、瞬きする間にその表情を仏頂面に戻して口を開いた。
「何が言いたい」
「千代松殿は、此方においでですね?」

 奥からどたんばたんと物凄い音がする。

 人の騒ぐ声がして、次に聞きなれた叫び声を聞いた青鷺が、彼を対応していた男を見て口角を上げた。
「……青鷺殿っ!?」
 右腕をだらりとぶら下げた千代松が、左腕だけで暗殺部隊の者たちを張り倒して走っている。
 背を殴られ、足をかけられ、妨害のせいで中々前へ進めていないものの、千代松は力ずくで青鷺に向かって手を伸ばした。
 そうすることが当然であるかのように。
「千代松殿!!」
 青鷺もそれに答える。
 そうすることが当然であるかのように。


 諜報部の男が杏次郎の部屋にやってきたのは、青鷺が暗殺部隊に足を運んだすぐ後のことだった。
「……おや、気付かれたかい?」
 ストーブに手をかざしながら微笑んでいる杏次郎は、頭を下げる部下に対して責めるでもなく言うと、両手を擦り合わせた。
「折角、探したのにねえ。あの子を捕らえておける場所」
「申し訳御座いません、青鷺殿は行動が読めませぬ」
「いいよ、気にしないで。彼は千代松のことになると酷く過保護になるから」
 千代松を痛めつけ捕まえた首謀者は、穏やかに笑っていた。
 
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