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里中は半分死んでいる(里中)

 契約した時点で僕は人間をやめた。

 生きてもいないし死んでもいない、そんな中途半端な存在になった僕を見て、四月一日は笑う。吐く息が冷えても温まってもいない僕を見て、足音が響かず響く僕を見て、四月一日はけたけたと笑う。
 それがとても無邪気に見えて、僕もつられて笑った。
 狸の悪霊に手を引かれて歩く道は、人のものでも霊のものでもない。半分死んで半分生きている妙な僕のためにしかれた道。
 十円玉一つで骨の髄まで呪い尽くす彼の笑顔はとてもとても明るくて、心の底から祟りを楽しんでいて、だから僕は隣で笑う。得意そうに擦り寄ってきては彼が成し遂げた成果を自慢してくれるのを聞きながら、良かったね、と頭を撫でる。
 楽しそうだ。嬉しそうだ。呪いを振りまいて破壊を招いて大事故に手を叩く彼は本当に楽しそうだ。
 僕まで嬉しくなってくるのだから、不思議だね。

 君の笑顔と引き換えに何人死んだだろう。

 君の笑い声と交換で何人不幸になっただろう。

 あぁ、楽しいね、四月一日。
 
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