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「#ファンタジー」のBL小説を読む
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- ナノ -
短文5題

1.かざした右手を撃ち抜く視線
(御境茶々彦)
 隣を歩く小さな恋人、現在、唯一の家族であり宝である姫は、どうやら他者からは理解されがたい方のようだ。
 理解を必要ともしていらっしゃらないので、私は全く気にしない……ふりをしながら、姫を見てひそひそと話す者たちを殺す勢いで睨みつける。
 気にしてるんじゃないか、という突っ込みは耳が痛いのでやめて欲しい。
 ああ、また姫をそんな目で見てからに。姫を視線で汚す気か。貴様らのそっ首掻き落として召喚術の贄にしてくれようか。
 やたらと大きな右腕で姫を庇うように視線を遮る。異形の腕に、先程とは比べ物にならない視線が刺さるが、それは別にどうでも良かった。
 お前達の瞳は、姫にとって汚らわし過ぎる。

2.流したはずの渇いた涙
(国原文)
 十六夜が大声で泣いた日。確か、雷が子猫を撃ってしまった日。
 十六夜にはどうする事も出来なかった。突然飛び出した小さな命を避けられるだけの、弱い雷ではなかったから。
 十六夜が大声で泣いた日。
 眉をひそめる私の頬には、十六夜が流した涙の跡が、幾筋もついていた。

3.雲にのって空を歩く
(選取緑風見鶏)
 耳の羽では満足に飛べないけれど、青く輝く空の心地よさは誰よりも知っているつもりだから、私は今日も空を見上げる。
 ぴん、と立った髪の毛を見た。明日は晴れだ。明日は総記ちゃんとラルフ君と、屋上でお弁当を食べる約束をしていたから、凄く嬉しい。
 私の髪の毛はお天気レーダー。太陽と、雲と、風と青空にお伺いを立てる、自慢の天気予報アイテム。
 空を散歩して天気を探る事なんて、朝飯前なんだよ!

4.1ページだけ残った日記
(谷章)
 三日坊主になっちゃう日記を、頑張って書きます。今日は黄昏エースが頑張った。
 あのね、十六夜ジャックを助けたの。
 それから、明星キングに助けられて、十六夜ジャックに庇われたの。
 ……あれ、頑張ってないじゃん!
 三日坊主になっちゃう日記を、頑張って書きます。今日は僕も頑張った。
 残りは一ページ。最後まで書くって決めてるの。
 巽君と文ちゃんがくれた日記帳だから。

5.終わった明日と始まる今日
(五木巽)
 今日はSAYTSUIさんの、喧嘩パーティーに、招待された。喧嘩パーティーなんて、私には無縁だと思っていたのだが、型破りというか、常識を覆す彼の開く宴は、圧倒されるばかりで、思わず笑ってしまった。
 拳を交える喧嘩なんて、野蛮だと思っていた。しかし、彼に挑む生徒達の楽しそうな事といったら無い。そうか、祭りなのだ。理解した瞬間、あまりにも乱暴なパーティーではあるが、参加者が尽きない理由と、SAYTSUIさんが慕われる理由も、何となく分かった。
 私は流石に参加できなかったけれど、この破天荒な清清しさは、ついていきたくなる者の気持ちも分かる。
 私の価値観の一つが崩された日だ。今まで通りの明日が終わり、新しい価値観の今日が流れ込んできた日だ。
 真似はしないが、否定もしない。
 面白いものを見た。
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