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外道さま、外道さま(外道)

「外道さま、外道さま、いらしてください」

 集団で鉛筆を握って、紙の上を滑らせる。
 十円玉ではなく鉛筆にしたのをアレンジのつもりで呼び出している子どもたちに、質問に答えてくれる霊はにこやかに降りてきた。
「外道さま、外道さま、○○君が好きな女の子は誰ですか」
 至極どうでも良い。
 しかし外道と呼ばれた女は、見えないのをいいことに鉛筆を握ると、すらすらと名前を現す文字をなぞっていく。
 にこにこと微笑みながら次の質問にも答え、そのまた次の質問にも答えていく幽霊は、とても楽しそうに子どもたちを見ていた。
「外道さま、外道さま、有り難う御座いました。鳥居よりお戻りください」
 いいえ。
「外道さま、外道さま、有り難う御座いました。鳥居よりお戻りください」
 いいえ。
「外道さま、外道さま、有り難う御座いました。鳥居よりお戻りください」
 いいえ。
 何度やっても拒否される退去勧告に、子どもたちが焦り始める。
 外道と呼ばれた女の霊はにこにこと笑ったまま、教室の窓を開け放った。
 風が教室に吹きこみ、驚いた子どもが悲鳴を上げる。
 鼻歌を歌い、一人の子どもを抱えた外道が笑う。
 にこり、ではない。
 にたり、だった。

 腕を思い切り振る。

 女子生徒が一人、宙に浮くのが見えた。
 此処は校舎の二階。
 ベランダを通り越して投げ飛ばされた生徒が向かう先は地面しかない。
 数秒して、ぐしゃ、という音がした。

「あっけない最後だね。お疲れ様でしたぁ〜」
 
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