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ちっこい母上がやってきた(一平屋重丸/軽助)

 植物の名前も碌に知らない小さな狸が、道端に生えた草花をぷちぷち摘み取っていく。白いもの青いものピンク色のもの、小ぶりな花からびよーんと伸びたオレンジ色の花まで気ままに。
 小学生かそこらにも見える幼い茶髪の少女がとことこ歩く。小さな花と長い花がアンバランスに主張しあうへんてこな花束を持ったまま、少女はとある学園の門を潜った。其処でも見つけた草花を適当に摘み取り、よちよち歩いていった。

「かるちゃーん」

 召喚科、従属クラスを覗き込む。
 ざわざわと少女を見る生徒たちの中、目当ての人物を見つけた少女はよちよちと教室に入っていった。それに勢いよく立ち上がったのは、一平屋軽助。
 驚きを隠せない一平屋に少女は構わず近づいていく。
「かるちゃーん、こんにちはー」
 ぺこりとお辞儀。
 そうして、背伸びをして手を伸ばす。
 一平屋は慌ててしゃがみこみ、その少女の意思を汲み取るように頭を差し出した。小さな狸はにへ、と笑顔になり、一平屋の頭をさわさわと撫で始める。
 小さな女の子に撫でられる大きな狸。
 何ともミスマッチな光景だ。
「かるちゃん、これ、おみやげ」
 手にした小さくアンバランスな花束を差し出す少女。
 それを受け取り、一平屋は照れたような、困ったような笑みを浮かべた。
「なんで……此処に?」
「かるちゃんに会いにきたの。こんにちはー」
 ぺこり。
 小さな女の子が再びお辞儀をする。
 一平屋も慌ててお辞儀を仕返した。

「こ、こんにちは、母上!」

 頭を撫でようとしても届かなくなった娘に小さな花束を届けに、小さな母親がやってきた。
 うわーい、と両手を挙げて娘に抱っこをせがむ母親というのも珍しい。
 一平屋重丸(えまる)。
 小さな小さな、実の母である。
 
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