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包帯は宵闇へ告げる(ネバー)

 包帯ぐるぐる巻きにロングコートという不審者、ネバーが気配を辿って歩を進めていく。未だにちょろちょろと回廊産の雑魚がうろついてはいるが、大きな気配を辿っていけば何の事はなかった。
 途中、リジェクトに会いそうになったり、倒れているメタルを見つけたりと、大きな気配にずれが生じたが。
「……この、少女が?」
 くぐもった声で呟く男か女かも分からない包帯人間は、辿り着いた先にいた少女の姿に若干たじろいだ。
 少々幼さが残る小柄な女子生徒は、虚ろな目でただ立っている。何を見ているのか、若しくは何も見ていないのか、視線は虚空を彷徨っていた。
 灰色のロングヘアーが無造作に揺れる。
 ゆるりと歩き出した少女を追いかけたネバーは、その子の前に飛び出すと即座に跪く。ぼんやりとした視線が降って来るのを感じつつ、包帯だらけの怪人は言いつけられていた用事を伝えるために包帯の下で口を開いた。

「宵闇ジョーカー様とお見受けしました。此度、閣下よりお言伝を賜り参上致しました。学園の破壊、破戒、崩壊を始めます。どうぞ動かれますよう」

 少女の体から漏れ出る気配は確かに昔感じたあの者の気配である。緊張を含んだ声で告げたネバーは、すぐに立ち上がった。
 頭を下げ、その場を後にする。
 学園に混乱を起こし、マザーの卵を産み付けやすい環境にする事。マザーの卵は不安定な世界や人間に宿り、やがて誕生する。そうして周囲を巻き込み、化け物を呼び、世界を一つ食らい尽くして廃墟にするのだ。
 清水に言いつけられた通り、卵を産み付けやすくするために活動するのが手駒たるネバーの役目であった。
 恐らく、環境が整えばネバーもメタルも卵の餌食とされるだろう。
 分かっていても動くのだ。

「閣下と蜘蛛様のご意思のままに」
 
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