その日を境にテラになりました(テラ)
確か、わが国は戦争に負けたのだと思う。
物心がついた時には既に我の足首には枷と鎖がくっついていた。
奴隷として収容されていたのだと思う。
男も女も肉体労働に励まなければ食事すら与えて貰えない最低な国に買われていたし飼われていた。
まぁ、女の肉体労働は、ちと意味が違うのだが。
月に一度、女たちが複数人ランダムに選ばれて王宮へと召抱えられていく。
前の女と交換で。
何をされているのかは想像しなくとも分かるし想像したくもなかった。
「おい、666番……来い」
縁起が悪いとか悪魔の獣だとかいう数字が宛がわれた我が呼ばれた。
こんな女っ気のない奴にまでお呼びが掛かるとは、この国の王はいよいよいかれたらしい。
すすり泣く女の列が王宮へ進んでいくのを見ながら、隙を突いて逃げ出した。
普段から走り回っている我には足枷の重さなどへでもなかった。
警邏の兵から剣を奪い、護身用に振り回し、とにかく走った。
国から出ても追っ手は来るものだ。
何人切ったか分からない。
麻袋のような奴隷服は返り血でばりばりになっていた。
髪は血液と砂埃で金色から茶色へ変わっているし、体には無駄に筋肉がついた。
逃げて生きるためには何でもした。
食糧を店から盗んで走り、追っ手が来れば切り捨て、踏み入るなといわれた地には平気で踏み入り進んでいった。
汚れた体も気にせず、倒した相手の装備を奪って着込み、倒した相手の戦術を盗んで振るった。
生きていくためには何でもやった。
やがて食糧も尽き、体力も気力も尽き果て、我は倒れた。
もはや此処までかと自分の定めを呪ったそんな矢先。
黄砂の風が吹く日に。
我は。
魔王に出会った……。
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