忍び込む銀色(SNB-060)
合金製戦闘用ロボット・ミスリルノイド。その中でも偵察・暗殺に向いた設計をされているSNB型がフォレスト学園のとある建物に潜伏していた。
SNB−060番、ボディーカラーはシルバーとパープル。忍ぶ気が全く無いカラーリングのそいつは、今、非常に薄暗い場所にいる。学生寮の天井裏である。
何故そんな場所にいるのかといえば簡単で、警報装置のスイッチを切り忘れていたので、装置が作動しない場所に逃げ込んだら此処でしたという落ちなのだ。
阿呆だこいつ。
「ふふん、機関により生み出され半年ほど存在を忘れられようやく思い出して貰ったと思えば生みの親はとっくに退所済みでしたとかいう落ちだった某にもようやく出番が来たで御座るよー!」
天井裏に忍び込んでいるのにも関わらず割と大きめな声でそう宣言するSNB−060。というか、また御座るキャラだ。間に合ってます。
こいつは機関の誰かに作り出されたのだが、その誰かが去ってしまい半年ほど格納庫に収納されていた。自力で目覚めたSNBは格納庫を出ようとして研究所の壁やら装置やらに激突、結構ぼこぼこにした。
それを持て余した研究員によって半蔵門半蔵や大君君主の捜索を建前に、この学園にポイされたようなものなのである。
持ち主不明の超ドジ忍者ロボが研究所をばりばり壊していったら誰だって追い出したくなるとは思うが、なんかやるせない。
「半蔵門半蔵、及び、大君君主の捜索に移るで御座る! というか、お払い箱された某はそれくらいしかする事が無いので御座る」
しかも追い出されたと自覚している辺りもうやるせない。やるせない。あぁやるせない。三回くらい言ったが別に大切でも何でも無かった。
銀と紫のボディーをした忍者は張り切って天井裏から抜け出す。其処に力を注ぐのかよ、と突っ込んではいけない。大してやる事もないから仕方ないのだ。
彼らを見つけた後何をどうすれば良いのかも分からないから、とりあえず忍んでいるのだ。
「敵が来たら逃げる隠れるエリア移動! これ、忍者の鉄則で御座る!」
いつの間にか学生寮の屋上に立っていたSNBはそう言う。
元々戦闘用ロボットは戦闘ゲームにおいて人間の代わりにバトルを行う、いわばゲームキャラクターやポ○モンのような存在である。詰まる所、マスターがいなければ戦う事さえ許されない。
なので、忍者の鉄則というか主人を持たないSNB−060の鉄則なのだった。
寂しいロボットである。
「いざ! 敵は本能寺にあり!」
本能寺じゃねぇし此処。
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