のんびり国原家
国原家の畑では、二人の人影が農具を持ち、歩いていた。
作業を続けながら、学園祭の終了と共に帰ってくる母親と伯父たちを思う。
畑で作業を続けている父に声をかけて茶にする。
畔に座り込んだ二人がするのは、森学園についての会話だった。
「学園祭が終わった頃に手続きするってさ」
国原文・学姉弟の従兄弟である青年が言う。
「別に、学校とか行かなくて良いよ。どうせ友達できないし」
淡々と返すのは青年の妹。赤く長い髪を束ねもせずになびかせていた。
「俺は副担任としてあの学校に行ぐんだよ。文ちゃんいるし、寂しくないぞ?」
「文ちゃんには会いたいけどさ……」
にこにこ顔で話す青年と、自信がなさそうに話す女性。
国原雅の妹、秋の子供たちである彼らは、学園祭が終わると同時に森学園へやって来るらしい。
「お野菜結構売れたわね」
空になった商品棚を見ながら雅がのほほんと笑う。
セクシー人参がレジの横に座っているが、それ以外はあまり残っていなかった。
農家の顔が見えるというのは強みになるらしい。
「あとは白菜とか其処らかしら?こんなに大きいもの持って帰るのは面倒だし、売り切っちゃいましょ」
「簡単に言うんでねぇよ」
赤いポニーテールを揺らして妹の秋が突っ込む。
売り切ろうと言われて即売り切れる訳も無く、大き目の野菜は棚にどっかりと腰を下ろしたまま動く気配がない。
祭りででかい野菜を抱えて店を回るのはしんどいからだ。
それ以外に何がある。
先程メイクを落とした文が会いにきた。お祖父ちゃんお祖母ちゃんとじゃれあって、父に抱きついて、嬉しそうに戻っていったのを見られて安心したようで、父の雅はいつもより朗らかな笑顔であった。
国原家はいつも通り、のんびりとしているようだ。
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