拒絶の名前を持つ骸骨
保健室のベッドに横たわり、リジェクトは死神の横顔を思い出していた。
少し、笑ったような気がする。
それが見間違いだったのか、本当だったのかは分からない。けれど、ジェントルを迎え撃つと宣言した彼の背中はとても気高かった。
「そうだ……あいつだって、仲間なんだ」
撤回するつもりなど毛頭ない。デスが嫌がろうと、それすら拒絶して言い張ってやる気でいる。清水の暴力に耐えて今まで生きてきた同士なのだ。
同じ組織で暮らし、命を繋いできた仲間なのだ。
そしてこれからも、仲間同士で生きていくのだ。
「大丈夫かな、あいつ」
瞼の裏には死神の姿が焼きついている。拭っても拭っても浮かぶ彼の姿に苦笑いを零し、リジェクトは溜め息をついた。
今までにない感情だ。
嫌いだった筈なのに、今こうして、とても心配している。彼の一言が格好良く聞こえて堪らなかった。
鎌を握って歩く彼は、死に向かって歩いているのだろうか。あの仲間は、死ぬのだろうか。ジェントルに殺されるのか。清水に殺されるのか。
カーテンの向こうががやがやと騒がしい。恐らく怪我人の手当てに追われているのだろう。
リジェクトは目を閉じた。
息を深く吸う。
リジェクトは知っていた。自分にしか出来ない事だと知っていた。
口を開いて、それを言う。
「デス……お前の敗北を、拒絶する」
勢いよく起き上がる。まだふらつくが、言っている場合では無い。
机に置かれた覆面を手に取り、頭からすっぽりと被せた。
何故か、柔軟剤・レノ○の匂いがした。
「……洗ったのかよ、これ」
さっそく戦意喪失しかけたが、リジェクトは学園の地図を桃桃から受け取り、旧校舎へ向かって歩きだす。
もう少し休めと何度も言われたが、骸骨の覆面を被った彼女は首を横に振った。
「仲間が頑張ってるんだ。僕だっていつまでも惰眠を貪ってられないさ」
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